国内

75歳以上の医療費、悩み深い2割負担 コロナ禍で菅首相の判断は

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で議論が止まっていた、75歳以上の後期高齢者が医療機関で支払う医療費の窓口負担をめぐる問題が、政府の全世代型社会保障検討会議で動き出す。政府は今の原則1割から「一定所得以上は2割」に引き上げる方針だが、来秋までに行われる衆院選が視野に入り、コロナ禍の収束も見通せない中、所得基準を定めるのは容易ではない。

(坂井広志)

 75歳以上の医療費負担をめぐっては、現行制度は原則1割で、年収383万円以上の「現役並み所得」がある人は3割となっている。昨年12月の中間報告には2割への引き上げを盛り込んだが、対象の線引きには結論が出ていない。

 日本の人口構成を見ると、令和4年から団塊の世代(昭和22~24年生まれ)が75歳以上になり始め、社会保障費は急増する。75歳以上の1人当たりの医療費は現役世代の約4倍で、財源の8割強は公費と現役世代の支援金で賄っている。

 財務省は「近年の高齢者の医療費の増加により、支え手である現役世代の保険料負担は重くなっている」と指摘。財政制度等審議会(財務相の諮問機関)は今月8日の分科会で「可能な限り広範囲」を対象に2割負担に引き上げるべきだと提言し、4年度までに改革を実施するよう求めた。

 検討会議では今後、議論を加速させるが、年末に結論が出るかは予断を許さない。衆院議員の任期満了が来年10月に迫る中、負担増の政策を決めることには与党内で抵抗感が強いからだ。自民党には「コロナ禍で収入が減った人が多い中、負担増まで強いるわけにはいかない」(中堅)と難色を示す声は多い。ある現職閣僚も「自民党内がもたない」と漏らす。

 日本医師会には、2割への引き上げが受診抑制につながりかねないとの懸念がある。中川俊男会長は「給付を狭めて負担を上げると決め打ちするような議論になっているのが気になる」と指摘する。背景には、財政論に偏らずあるべき社会保障制度を模索すべきだとの思いがあるとみられる。

 少子高齢化が加速し、社会保障費が膨張する中、将来世代の負担軽減が必要なのは論をまたない。ただ、降って湧いたコロナ禍は、その制度設計を一層困難にした。会議で議長を務める菅義偉首相が、衆院選に向けた選挙戦略とも絡めながらどう判断するかが注目される。

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