海外情勢

開発激化で「モルモット」批判も 中露企業、途上国でワクチン治験

 新型コロナウイルスのワクチン開発競争激化に伴い、中国やロシアなどの各国企業が大規模なワクチン臨床試験(治験)を途上国を中心に展開している。感染者数トップ10カ国中5カ国がある中南米では「(実験用の)モルモット」(地元メディア)と批判交じりの声も上がる。治験に参加するブラジルの被験者2人が「怖さはあったが誰かがやらなければいけない」と語った。

 被験者は医療関係者

 「世界的な挑戦。(コロナ禍)解決のために連帯しなくては」。米国、インドに次ぎ感染者数が多いブラジル。約9000人が参加する中国の科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)の被験者で40代生物学者のサマンタ・アルメイダさんが参加を決めたとき、夫や親らは「心配した」。自身も「怖さはあった」。

 参加にはコロナ感染歴がないことや妊娠していないことなどの条件がある。被験者はワクチンか、比較用の偽薬を2回に分けて注射されるが、どちらかは終わりまで告げられない。

 体温計や、体調を毎日記録する手帳などのキットを渡され、医師ら関係者とは通信アプリを通じ24時間連絡が取れる。1度目の投与を受けたが、体に異変はない。

 ブラジルは英製薬大手アストラゼネカなどの治験に約5000人が参加する“実験場”の一つ。被験者はいずれも感染リスクが高い医療関係者らだ。

 「全ての治験で安全対策を取っている」。シノバック・バイオテックは自信を見せる。南米ではペルーで別の中国研究機関が6000人の被験者を対象に開始。他の中国企業もメキシコやチリで実施方針だ。米製薬大手も各国で行う。

 中国による治験はアラブ首長国連邦(UAE)で最も進み、3万人余りが接種。バーレーンやエジプト、バングラデシュ、トルコでも治験が進んでいる。

 投与後に微熱や頭痛

 ワクチン「スプートニクV」の4万人規模の治験を進めるロシア。友好国ベネズエラが2000人に治験を行う予定だ。支援する政府系ファンドは「精査されていない実験的技術で命を危険にさらすことはできない」とし、安全の重要性を強調した。各企業の歯切れは良いが本当に大丈夫なのか。

 1度目の投与の後、微熱と頭痛、倦怠(けんたい)感が生じ、渡された解熱剤を飲んだ。アストラゼネカの治験者で50代小児科医のモニカ・レビさんは2回の投与を受けた。本物か偽薬かは知らない。

 このワクチンでは9月上旬、被験者に副作用が疑われる深刻な症状が発生したため、全世界での治験を一時中断したが、参加をやめることは考えなかった。「説明を受け、単独の例だと思ったし、どんなワクチンにも副作用はある。私はコロナにかかる方が怖い」

 友人には「狂っている」と反対されたが「皆がそう考えたら永遠にワクチンはできない」と意思は固い。家族には高齢者もいる。「一刻も早くワクチン接種を受けさせたい」と思いを語った。2人に渡されたのは交通費や食事券程度で報酬は受け取っていない。効果も分からない。だが、いずれも自らが関わるワクチンが「最も早く世界で出回るようになるだろう」と期待を込めて語った。(サンパウロ 共同)

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