海外情勢

英・EUのFTA交渉が難航し続ける理由は 漁業権問題で軋轢

 欧州連合(EU)を離脱した英国とEUとの自由貿易協定(FTA)など新たな将来関係の構築に向けた交渉が難航している。なぜ、合意する兆しが見えないのか-。(ロンドン 板東和正)

 FTA交渉の協議で英EU間の溝が広がっている主要課題の一つが、「英周辺海域の漁業権」の問題だ。

 EUの共通漁業政策下では、加盟国は割り当てられた漁獲上限を守れば、他国の排他的経済水域(EEZ)でも漁ができる。ジョンソン英政権は離脱後は漁業海域を自国で管理したい考えだったが、EU側は英海域でこれまで通り操業する権利を求めている。

 英メディアによると、英国は約3年間は従来通りの加盟国の権利を認め、その間に新たな漁業権割り当てのルールを協議する妥協案を示したが、それでもEU側は首を縦に振らなかった。

 EU側が英海域での操業にこだわるのは、フランスやオランダなどの漁業関係者の事業継続に欠かせないためだ。英国の近海にはサバ、タラなどがとれる豊かな漁場があり、EU加盟国の北大西洋全体での漁獲量の35%を英海域が占めているとされる。フランスのマクロン大統領は15日のEU首脳会議の開幕前、「いかなる場合であっても、(EU加盟国の)漁師が離脱の犠牲にされてはならない」と訴えた。

 一方で、英政権にとっても、英国の漁業関係者の権利を守ることは重要だ。漁業関係者の大半は強硬なEU離脱派で、離脱を推し進めてきたジョンソン首相にとって重要な支持者。漁業関係者は自国海域で他国船が操業することに不満を募らせており、漁業海域を自国で管理することで「EUから『主権』を取り戻す」(関係者)ことを求めている。

 英紙タイムズは、ジョンソン氏が漁業権でEU側の主張を受け入れれば「大きな政治的な裏切りとみなされる」との見方を示した。貿易関係に詳しい英専門家は「漁業関係者を失望させることは、ジョンソン政権に悪影響を及ぼす」と分析する。

 また、英・EUは交渉で「公正な競争条件の確保」をめぐる協議でも食い違いを見せている。

 両者は交渉にあたり、関税や輸入割り当てを設けないことを目指す姿勢だ。だが、EUはそのために、英国が環境、労働、税制、政府補助金をめぐる規制をEUと同等の水準にし、「公正な競争条件」を保つよう求めている。英国が規制を緩和・撤廃し、安い製品を輸出するようになれば、EU企業に不利になるためだ。

 しかし、英政権は企業の自由競争を促進するため、労働や税制などで規制緩和を進める方針を示している。

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