海外情勢

英・EUの交渉次第…日本企業に残る懸念 日英EPA署名

 6月の交渉開始からわずか4カ月半という速さで日英の経済連携協定(EPA)が23日に署名され、英国の欧州連合(EU)離脱で懸念された日英の通商関係への混乱は回避された。しかし英国に欧州事業の拠点を持つ日本企業にとっては、英国がEUとの間で進めている自由貿易協定(FTA)交渉が頓挫すれば悪影響を受ける懸念は残ったままだ。一方、日英EPAには環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を拡大させる効果も期待され、日本の通商戦略の手腕が問われる局面になっている。

 日英EPAが必要となったのは英国のEU離脱が原因だ。今年末までの激変緩和期間内に日英の交渉がまとまらなければ、日EU間のEPAで日本企業に認められている有利な条件が英国に関しては一旦無効となり、1000社以上の英国進出日本企業に影響が出かねなかった。第一生命経済研究所・田中理主席エコノミストは「日英交渉で日本側が日欧EPA以上の追加の要求を行えればよかったが、今回は年内妥結で英国進出の日本企業を守ることを優先した」と分析する。

 ただ、日英EPA以上に交渉決裂の影響が深刻なのが、英国が年内合意を目指すEUとのFTAだ。

 年内妥結に至らない場合、英国からEUへの輸出で関税が発生したり、ビジネスのやり取りに不都合が生じたりする状況が予想される。また合意となっても内容によっては日本企業にとって不利になるおそれが残る。例えば自動車が「英国産」と認められるために必要な英国産の部品の割合が引き上げられれば、日本の自動車メーカーは優遇関税を受けるために英国産の部品の割合を増やさねばならない可能性がある。

 梶山弘志経済産業相は23日の会見で「(日英だけでなく)英EUのFTAが成立しないと意味がない」と強調した。

 一方、日英EPAには英国のTPP加盟を後押しする効果も期待される。英国のトラス国際貿易相はTPP参加で「自由貿易、特にデータやデジタル分野を進めたい」と意欲を表明した。日本側でTPPを担当する西村康稔経済再生担当相は「日英EPA署名が(TPPの)加入申請に向けた準備の後押しとなることを期待する」と述べた。

 日本は来年、TPPの議長国となる。英国の参加、ひいてはこれに影響を受ける形での米国の再参加などに向けた議論を主導したい考えだ。(那須慎一)

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