26日の菅義偉(すが・よしひで)首相の所信表明演説は、安倍晋三政権の路線を継承しつつ、「デジタル庁の創設」や「マイナンバーカードと健康保険証の一体化」など、首相就任以来訴えている肝いり政策を並べる。ただ単に安倍路線を継承するだけでなく、首相の独自色をアピールする意欲がにじむ。
その際たるものが「グリーン社会」の実現だ。演説では2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにし、脱炭素社会の実現を目指すことを宣言する。
政府はこれまで、温室効果ガス排出ゼロを目指してきたが、目標時期は「今世紀後半のできるだけ早期」と曖昧にしていた。初めて具体的な時期を明示し、地球温暖化対策に積極的な姿勢を国内外に示すとともにグリーン社会を経済成長の原動力としたい考えだ。
首相は演説を「国民のために働く内閣として改革を実現し、新しい時代を、つくり上げていく」と結んだ。携帯電話料金の引き下げや不妊治療の保険適用など就任直後から矢継ぎ早に関係閣僚に指示を飛ばし、閣僚を政策実行に駆り立てていることも高支持率の一因とみられる。
国民からの期待が高まる一方で、個々の具体的政策が首相の目指す国のあり方にどのように結びつくか、演説の中で十分に説明されているとは言い難い。首相は「私が目指す社会像は、『自助・共助・公助』そして『絆』だ」と強調するが、今後の国会論戦で丁寧に説明していくことが求められる。(杉本康士、田中将徳)