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TOBで親子上場解消 効率化も…会社独自性失う恐れ (1/2ページ)

 【経済#word】TOB(株式公開買い付け)

 NTTが9月末から開始したNTTドコモへのTOB(株式公開買い付け)が成立し完全子会社になれば、ドコモは上場廃止となり、いわゆる“親子上場”が解消される。伊藤忠商事も8月にTOBでファミリーマートへの出資比率を引き上げており、ファミマは11月にも上場廃止となる。いずれもTOBを活用して大量に株式を取得し、親会社主導で迅速な意思決定や一体運営を強化する狙いだ。ただ、上場子会社の個性が失われるといった懸念も指摘されている。

 「値下げと完全子会社化に直接の関係はないが、財務基盤を整えることで値下げの余力が生まれる」

 9月29日の記者会見で、NTTの澤田純社長は、菅義偉(すがよしひで)首相が意欲を示す携帯電話料金引き下げを念頭にこう強調した。経営環境が厳しさを増す中、値下げの原資を捻出するためにも、ドコモの完全子会社化が必要だった。

 そのためには、TOBが最善策だったのだ。

 TOBは英語の「Take Over Bid(テーク・オーバー・ビッド)」の頭文字を取った言葉で、日本語では「株式公開買い付け」と訳される。

 買い付け価格や取得株数、期間などを事前に公表することで、大量の株式を効率的に買い取ることができる利点がある。

 仮にTOBではなく、予告なく株式市場で買い進めるとすれば、その買い取り行為を通じて株価が上昇してしまう。TOBの買い付け価格は、その時点の株価にプレミアム(上乗せ)をつけるのが一般的だが、それでも、市場を通して買い付ければ、「結果的に株式の取得費用が大きくかさんでしまう恐れがある」(三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩シニアストラテジスト)のだ。

 こうしたTOBの利点を活用し、親子上場を解消する動きが相次ぐ。

 伊藤忠商事は8月、TOBでファミマへの出資比率を引き上げ、11月にもファミマを上場廃止にする予定だ。海外も含めた伊藤忠のネットワークを生かし原材料の供給や、商品開発力を高める狙いだ。

 ソニーもTOBで金融子会社のソニーフィナンシャルホールディングス(SFH)を完全子会社化。SFHは8月末で上場廃止となった。経営の一体化により、ITと金融が融合した「フィンテック」分野などをさらに強化していくものとみられる。

 日立製作所もTOBなどを活用したグループ再編を進め、平成18年に22社あった上場子会社は、日立建機と日立金属のみになった。

 もともと、親会社と子会社がそろって株式を上場する親子上場には批判があった。大株主である親会社が配当の受け取りや議決権の行使などで、上場子会社の少数株主の利益を阻害するといった問題が指摘されていたからだ。

 このため、日本全体でも親子上場は減っている。野村資本市場研究所によれば、令和2年3月末の親子上場数(上場子会社数)は259社。ピークだった平成19年3月末の417社と比較して4割近く減少した。同研究所によれば、今後も上場子会社が減る傾向は続くという。

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