海外情勢

中国、影響圏拡大へ「米抜き」経済圏に注力 李首相は「自由貿易の勝利」と強調

 【北京=三塚聖平】日中韓など15カ国がRCEPに署名したことで、域内で最大の経済規模を誇る中国はアジアでの影響力拡大を狙う。米国との対立長期化も見込まれる中で、貿易関係をてこに「仲間作り」を進めることは死活に関わる問題だからだ。一国主義を鮮明にしたトランプ米政権の隙を突く形で、中国は「米抜き」の経済圏の構築に力を入れている。

 「東アジアの地域協力で象徴的な意義を持つだけでなく、多国間主義と自由貿易の勝利でもある」

 中国の李克強首相は15日、テレビ会議方式で開かれたRCEPの首脳会合でこう意義を強調した。国営新華社通信は評論で「中国の発展と開放の恩恵をさらに共有することをASEAN側は広く期待している」と主張しており、RCEPをてこに域内における経済・貿易上の影響力を拡大させるものとみられる。

 中国が強く意識しているのは米国の存在だ。対中強硬姿勢を強めるトランプ政権は、中国製通信機器の排除を各国に求めるなど「中国包囲網」の形成を呼び掛けてきた。ただ、貿易面では環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)から離脱するなど米国は自ら影響力をそいでいるのが現状だ。香港メディア「香港01」は「RCEP署名は、トランプ政権の対中貿易封じ込めが失敗寸前であることを示した」との見方を示す。

 対米関係悪化の長期化もにらみ、中国は自国の影響が及ぶ経済圏をさらに広げる構えだ。10月下旬に開かれた共産党の重要会議では「多国間や2国間の投資・貿易協力に積極的に参加する」との方針が確認された。日中外交筋によると、中国は日中韓自由貿易協定(FTA)の交渉加速に意欲を見せるほか、TPPへの参加可能性も探っている。

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