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「ハンコレス」の福岡市がDX戦略課を新設 民間専門家を採用、取り組み加速

 福岡市は、行政のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する司令塔として新組織「DX戦略課」を20日付で発足させると発表、16日に民間専門家3人の公募を始めた。行政手続きのオンライン化にいち早く着手した同市は9月末までに国や県の法令で定められた手続きを除いて押印義務を廃止する「ハンコレス」を達成している。今後の展開をにらみ、民間専門家を外部から採用し、取り組みを加速させる。(中村雅和)

一丁目一番地

 福岡市の新組織は総務企画局企画調整部内に置く。職員4人に加え、公募する民間専門家3人の計7人でスタート。民間専門家は週1~2日程度の勤務を想定し、市役所に出勤しないテレワークも可能とした。

 行政のDXは、安倍晋三前政権下で7月に閣議決定された「骨太の方針2020」で「一丁目一番地の最優先政策課題」に位置付けられた。菅義偉政権もこの方針を引き継ぎ、河野太郎・行政改革担当相のもとでスピード感を強く意識した取り組みが進む。

 その象徴が脱ハンコだ。河野氏は行政手続きでの押印を原則廃止するように各省庁に要請し、見直しが進む。同市はこの動きを先取りしている。転出入届や保育所の入所申請など約4700種類の書類のうち、市単独で見直しが可能な3800種類について、9月末に「ハンコレス」を完了させた。

 同市の手法は菅首相も強い興味を示す。9月下旬、菅氏と福岡市の高島宗一郎市長が都内で昼食を共にした際にも話題になった。高島氏は「菅首相は『すぐやりたい』とおっしゃっていた」と振り返る。河野氏も10月6日の閣議後記者会見で「押印廃止を実現した自治体の経験を横展開したい」と述べ、福岡方式を高く評価している。

 今回、同市が新設するDX戦略課は「ハンコレス」の先にある行政手続きのオンライン化促進を見据えた一手だ。民間専門家の手を借りて課題の洗い出しや制度設計に加え、情報の表示の仕方や必要な情報を探す操作方法といったシステムのユーザーインターフェース(UI)の開発などを進める。高島氏は「UIデザインが非常に大事だ。各部局がばらばらに導入するのではなく、統一して対応する。最前線の民間の知恵を借りたい」と語った。

 DX戦略は、単に行政手続きだけにとどまらない。直接市民サービスに関わらない庁内のさまざま業務でもRPA(事務作業の自動化)の導入など、改革の余地はある。

将来見据え

 高島氏が行政のDXに力を入れるのは、行政の効率化による市民サービス向上と、高齢化の進展をにらんだ最適な職員配置を探る狙いがある。

 若いうちからインターネットに慣れ親しんだ「デジタルネーティブ」と呼ばれる若者世代をはじめ、パソコンなどの操作に抵抗がない層にとって、長時間の待ち時間を余儀なくされる窓口での手続きより、オンライン申請の方が利便性が高まる。

 オンライン化によって、これらの層の切り替えが進めば、高齢者などオンライン申請に抵抗がある層に、より手厚い対応が可能になる。さらに、効率化によって生み出した余裕で、福祉などオンラインでは対応が難しい部署への手厚い配置も可能になる。

 福岡市による民間専門家の公募は12月4日まで。電子メール(dx-designer@city.fukuoka.lg.jp)で受け付け、要項などは市ホームページで公表する。来年度以降も継続を想定する。

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