海外情勢

アマゾン薬局が業界に嵐 関連他社の株価急落、時価総額220億ドルを吹き飛ばす

 オンライン小売り最大手の米アマゾン・コムは17日、処方薬を取り扱うデジタル薬局「アマゾン・ファーマシー」の営業を開始した。米国の有料プライム会員には医薬品の割引が適用される。

 アマゾン・ファーマシーの利用者はウェブサイトやモバイルアプリを通じてオンラインで医薬品を注文でき、医療保険を適用して薬代を支払うことが可能だ。プライム会員は、保険を利用しない場合も、アマゾンのサイト上や提携する約5万の薬局の店頭で、ジェネリック(後発医薬品)やブランド医薬品の割引を受けられる。

 関連他社の株価急落

 アマゾンは2018年、処方薬をまとめて小分けに個別包装するサービスで知られるオンライン薬局のピルパックを7億5300万ドル(約784億円)で買収。医薬品小売業者は騒然となったが、事業統合に時間がかかった。今回のオンライン薬局創業でアマゾンは、米ドラッグストアチェーン2強のCVSヘルス、ウォルグリーン・ブーツ・アライアンスとより直接、競合することになる。

 アマゾン・ファーマシーの副社長でピルパックの共同創業者のTJパーカー氏は「顧客第一でアマゾン・ファーマシーを設計した。不便で混乱しがちな業界に顧客が夢中になることが狙いだ」と話している。

 アナリストらは長年、アマゾンがITを不動産分野に活用する「不動産テック」やロジスティクスの手腕を発揮して非効率といわれる約4兆ドル規模の米ヘルスケア業界に風穴を開けることができると見込み、同社が業界参入を深めるのを期待してきた。アマゾンのデジタル薬局の発表で業界に衝撃が走り、この日の米株式市場では、大手ドラッグストアチェーンや医薬品流通業者、医療保険会社の株価が急落。時価総額で合計約220億ドル(約2兆2900億円)が吹き飛んだ。

 デジタル薬局の始動で顧客は初めて、アマゾンのサイト上で処方薬を直接注文できるようになった。従来はアマゾンで処方薬を注文するとピルパックのサイトに自動転送されていた。

 今回の取り組みは、前々から処方薬を取り扱うウォルマートなど大型店舗との競争にも役立つ。大型小売店や生鮮食料品店の中には薄型テレビやスープ缶を販売する傍らで処方薬も扱うところもあるが、アマゾンのデジタル薬局はこうしたライバル勢との数少ない差の一つをなくすものだ。

 顧客を煩わすリスク

 アマゾンの躍進で消費者は店舗を避け、オンラインで多くの商品を注文するようになっている。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)はそうした傾向に拍車をかけた。

 消費者行動の変化に対し、ドラッグストアチェーンは既に戦略の見直しに着手。CVSは18年に米医療保険大手のエトナを680億ドルで買収し、医療保険サービスを店舗で提供する。ウォルグリーンは生鮮食料品や携帯電話などの商品を店舗で提供するため、多くの提携先と組む。

 ただ、アマゾンが市場に参入するからといってその優位性が保証されるわけではない。ドラッグストアは長い間、患者は店頭で薬剤師と話すことを好むと主張してきた。アマゾンはその体験をデジタルで再現しようとしている。

 もっとも、薬局チェーンからすぐに顧客を引き離す難しさをアマゾンが認識する可能性はある。保険で医療費を支払う人を中心に多くの消費者にとって、定期処方薬の受け取り先を医師に頼んで別の場所に振り替えてもらうのは面倒だ。

 パンデミックへの懸念から米国民が医者通いを避けている時期に、場合によっては、そうした変更に際して医師訪問を求められることもある。大手薬局チェーンがどこにでもあるのは、大半の消費者には最寄りの薬局があり、そこで買い物をすることが習慣として根付いていることを意味している。(ブルームバーグ Angelica LaVito、Cristin Flanagan)

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus