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デジタル政策20年、役所の縦割りや現場軽視カベに コロナで課題露呈

 菅義偉(すが・よしひで)政権がデジタル政策の司令塔を担う「デジタル庁」の創設に向け、12月に基本方針を策定する。2000年のIT基本法制定から20年。新型コロナウイルスが浮き彫りにしたのは、役所の縦割りと現場軽視が壁となり、行政のデジタル化が停滞してきた現実だ。歴代政権のIT戦略が掛け声倒れに終わった反省を踏まえ、体制を根本から見直す覚悟が問われる。

 「今はスマートフォンで何でもできる。でも行政はこれまで通り『窓口と紙』だ」。ITベンチャー「グラファー」(東京)を17年に立ち上げた石井大地最高経営責任者(CEO)は、補助金や住民票などをスマホで簡単に申請できるサービスを展開、契約先の自治体数を伸ばしてきた。

 スマホの個人普及率は現在6割を超え、連動する形で行政サービスに利便性を求める住民の声が高まった。「紙の時代に最適化して仕組みがつくられたため、文書、対面、はんこを求める。それが時代に合わなくなっている」(石井氏)。

 日本のIT戦略は基本法制定の翌01年、森政権が掲げた「e-Japan戦略」が出発点だ。「5年以内に世界最先端のIT国家になる」とうたい、インフラ整備を進めた。その後、小泉政権がITの利活用に軸足を移し、13年には安倍政権が「世界最先端IT国家創造宣言」で世界最高水準のIT利活用社会を描いてみせたはずだった。

 新型コロナ対応という肝心の場で、穴をさらけ出したのはなぜか。内閣官房IT総合戦略室の向井治紀室長代理は「霞が関では政策立案に高い価値が置かれ、政策を世の中に実装する現場はないがしろにされる」と明かす。これが「中途半端のなんちゃってデジタル化」(平井卓也デジタル改革担当相)を生んだ。

 全国民に10万円を配った特別定額給付金が典型的だ。マイナンバーカードを使ったオンライン申請を進めたが、受け付けた自治体では当初、紙を打ち出して目視で確認するアナログそのものの審査作業に追われた。

 マイナンバーカードは省庁の縦割りを超えて政策を進めることの難しさを示す例でもある。制度を所管する総務省と内閣官房は、健康保険証や運転免許証との一体化を長年検討してきたが、厚生労働省と警察庁の反対でほとんど進まなかった。今回、保険証に加え、よりハードルの高かった免許証の一体化にこぎ着けたことに驚きの目を向ける官僚は少なくない。

 来年9月の創設を目指すデジタル庁は首相直轄とし、他省庁に是正勧告する権限を持たせる方向だ。問題は組織論にとどまらない。「過去につくったシステムを捨てる決断ができるかどうかが成功の可否を握る」。神奈川県の情報統括責任者(CIO)兼データ統括責任者(CDO)に就いたLINE(ライン)の江口清貴執行役員は、デジタル化に合わせて業務自体を見直していく職員の意識改革の重要性を強調した。

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