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コロナ禍の裁判「公開の原則」どう維持すべきか、弁護団要請に配慮も

 新型コロナウイルスの感染拡大防止を図りつつ、憲法が裁判で保障する「公開の原則」をどう維持するのか。裁判所が頭を抱えている。各裁判所では今年春以降、法廷での審理日数が減る代わりに、裁判官と当事者の間であらかじめ争点を整理する非公開手続きの回数が増加。ただ、世論喚起や社会的な議論を深めることを狙った訴訟では、できるだけ公開の法廷で審理を求める声が強い。冬を前に深刻化する感染の「第3波」。司法現場で模索が続く。(杉侑里香)

9カ月ぶりの公開審理

 「私たちだけの問題ではないことを知ってもらうために公開の裁判は必要。応援が力になります」

 20日午後、大阪地裁大法廷で開かれた同性の婚姻の自由を求める訴訟の弁論。閉廷後の報告集会で原告の坂田麻智さん(41)とテレサ・スティーガーさん(37)は、約9カ月ぶりに法廷が公開された喜びを語った。傍聴席は通常の半分となる45席に抑えられたものの、多くが支援者で埋まっていた。

 訴えを起こしたのは西日本在住の同性カップル3組6人。国を相手取った訴訟に注目が集まったが、緊急事態宣言の発令で4月の審理期日が取り消しに。7月に再開されたものの感染リスクを懸念した地裁側の意向で、国と原告双方の代理人のみが電話で参加する非公開手続きが取られた。

憲法で「公開」規定

 地裁側は、その後も非公開で審理を続けようとしたため弁護団が8月、公開を求める意見書を提出した。憲法82条が「公開の原則」を規定していることを挙げた上で、同性婚の是非が最大の争点であるこの訴訟は全国的に注目度が高いと指摘。社会的な議論が深まることを期待し、原告だけでなく同じ悩みを持つ多くの人々が公開を強く望んでいると訴えた。

 要請が実を結ぶ形で開かれた今月20日の公開審理。当日は地裁側とともに弁護団も、マスク着用などを傍聴人に呼びかけたという。

 原告側代理人の大畑泰次郎弁護士は「弁護団が意見書という形で公開審理の要望を出すのは珍しいのではないか」とした上で「コロナ禍の中でも、裁判所が適正に手続きを進めているか公開の場でチェックしていく必要がある」と話す。

緩和拡大には慎重

 全国各地の裁判所では3月以降、法廷の傍聴可能人数を通常の3割程度にまで減らしたが、関係者が座れないケースが多発。東京では9月、複数の民事訴訟の原告らが合同で改善を求める要請書を東京地裁と高裁に提出した。

 10月下旬には「マスク着用であれば感染リスクは相当低い」などとする専門家の助言を受け、最高裁は傍聴席の人数を通常の約5割に緩和するよう各裁判所に通知している。

 ただ、自由に出入りできる法廷で、傍聴人全員の連絡先把握や検温の実施は現実的に困難。「第3波」の到来で感染拡大が懸念される中、裁判所側は緩和の拡大については慎重な姿勢を崩していない。

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