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鬼滅効果は限定的、エンタメ業界手探り続く 緊急事態宣言解除から半年

 新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言が全国で解除されてから、25日で半年が経過する。間もなく師走。年末年始はエンターテインメント業界も書き入れ時だが、実態は今も手探りの状態だ。それでも映画「鬼滅の刃」には多くの人が集まり、年越しの大規模フェスも開催を決めるなど、少しずつ立ち上がろうとしている。ウィズコロナのエンタメの現場を訪ねた。(石井健)

 大規模フェス開催

 国内最大級の年越しロック・フェスティバル「カウントダウン・ジャパン」は今月4日、この年末も開催すると発表した。

 千葉市の幕張メッセを会場に国内のロック歌手らが多数出演する。昨年は、年末の4日間で計約18万8000人の聴衆を動員した。今年は政府のガイドラインなどに基づき1日あたり2万5000人を上限とする。チケット代は約3000円上がるが、事務局は「収支は厳しい」と話す。

 「それでもフェス、音楽を止めてはいけない。フェスは会場設営スタッフ、周辺の飲食店、宿泊施設など多数の関係者で成り立っている。これらの経済活動の循環を再開させたい」

 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の来日公演は今月14日、盛況のうちに幕を閉じた。計8公演。座席は間隔をあけずに売った。招聘(しょうへい)元のサントリーホールの総支配人、折井雅子(60)は、「挑戦だった。演奏者も関係者も厳密な制限のもとで行動した。新しい公演スタイルは、お客さまと一緒になって作り上げることが大切だと実感した」と総括する。

 ただ、公演の世界も厳しい。ぴあ総研は10月、音楽、演劇公演について「回復は大幅に遅れている」と指摘。市場規模は昨年約6000億円だが、今年はその約8割が消失するとの試算を公表した。

 瀬戸際のライブハウス

 「年内、持つかどうか」。東京都内のライブハウスで、経営者の新見知明(しんみ・ともあき)(62)が、ぽつりと語る。大阪のライブハウスでクラスターが発生した春先以降、客足が戻らない。各種助成金を受けながら、インターネットでの有料配信も始めた。日本音楽著作権協会によると、ライブ配信は6~9月で約1300件と急増。新見も100万円以上を投じて機材をそろえた。人を集めるビジネスモデルから、演奏を収録するスタジオ業など業態転換も検討し始めた。

 日本ライブハウス協会など10団体は、7~8月に全国の経営者にアンケートを実施。「今の状態が続けば、1年持つか分からない」が9割を占めた。

 鬼滅効果は限定的

 シネマコンプレックス(複合映画館)は「鬼滅の刃」の大ヒットでにぎわいを取り戻したが、TOHOシネマズの戸嶋(としま)雅之常務(56)は「洋画ファンが戻らない」と懸念している。「007」シリーズの最新作に期待を寄せたが、公開延期に。北米の感染拡大が止まらず、ハリウッドの大作は軒並み封切りを来年以降に変更している。

 日本映画製作者連盟によると、10月の大手3社の邦画だけを見ると興行収入は約180億円。前年の3倍以上。まさに鬼滅効果だ。だが、洋画などを含む10月までの全興収は、前年の4割にしか届いていない。

 日本経済全体の回復を

 「エンタメは、われわれが心豊かに生きていくための重要な一翼を担っている。しかし、それも心に余裕があればこそ」と状況を憂うのはトライストーン・エンタテイメントの山本又一朗社長(73)だ。俳優の小栗旬(37)、田中圭(36)らの育ての親で、映画製作者でもある。

 山本社長は、「ショービジネスの根幹はあくまでショー。人が集まって騒ぐのが神髄だが、それが止められている。ネットでの配信など、どんどん知恵を出さなくてはならない」と話す。一方で、エンタメ業界だけで状況を打開できる段階ではないとも指摘。「経済の回復なしにエンタメの発展はありえない。日本経済が堂々と根を張って動いてこそ、だ」

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