専欄

習近平氏より評判が悪いおかげで…トランプ氏から“恩恵”の皮肉 

 元滋賀県立大学教授・荒井利明

 米国の次期大統領はバイデンで決まりとみてよいだろう。トランプの大統領任期は来年1月に終わるが、トランプ時代の4年間は、中国にとってどのような意味を持っていたのだろうか。

 トランプの中国語表記は「特朗普」が普通だが、「川普」とも表記され、中国のネット上では皮肉を込めて「川建国」とも呼ばれている。トランプの厳しい対中政策が中国人の愛国的感情をかき立て、国を強くする覚悟を与えてくれたから、というわけである。

 中国紙「環球時報」(11月2日付)の社説は、トランプが「川建国」と呼ばれていることを紹介しつつ、トランプにたたかれることによって、中国人はわが身を振り返って反省し、危機感を持つことができたと指摘し、過去4年間の米国の対中政策は「中国を覚醒させた」と述べている。そして、ハイテク面での弱点を補い、安全で信頼できるサプライチェーン(供給網)を構築することが不可欠であり、米国が手出しのできないまでに強くなることが必要だと強調している。

 トランプの対中強硬策が中国人に米中間のギャップがなお大きいことを再認識させ、弱くて遅れた者は打たれやすいというアヘン戦争以降の中国の近代史を改めて思い起こさせたということである。

 習近平指導部は10月の共産党中央委員会総会で採択した第14次5カ年計画と2035年までの長期目標に関する「提案」で、内需を拡大し、国内循環と国際循環の「双循環」を促進する新しい発展戦略やイノベーションを現代化の核心に据え、科学技術の自立・強化を図る方針を打ち出した。

 双循環は5月の党中央政治局常務委員会で初めて提起された概念だが、双循環にせよ、科学技術の自立にせよ、これらは保護主義の台頭、コロナ禍による経済不振だけでなく、米国との厳しい対立を考慮したものといえよう。

 習近平は先進諸国での評判はあまりよくないが、米国の調査機関「ピュー・リサーチ・センター」が夏に実施した世論調査によると、「国際問題で適切な対応をとっているか」との質問で、対象の先進14カ国のうち3分の2近くは、トランプよりも習近平を評価している。トランプも習近平も評価は決して高くないが、評判の悪いトランプのおかげで習近平は得をしているのである。中国、そして習近平はトランプに感謝すべきかもしれない。(敬称略)

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus