海外情勢

半導体受託生産でTSMC超え狙うサムスン アナリストから疑問視する声も

 韓国のサムスン電子が1160億ドル(約12兆円)を投入し、半導体受託生産(ファウンドリー)で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)を猛追し、次世代の半導体チップを含むファウンドリーで2年内にも首位を狙う。

 新構造GAAを採用

 サムスンのファウンドリー事業部のパク・ジェホン副社長は10月のイベントで「3ナノ(ナノは10億分の1)メートルチップの量産を2022年に開始する」と述べた。先進の同チップはTSMCも22年下半期の量産開始を目標にしており、サムスンは、ゲームチェンジャーと目される新構造のトランジスタ、GAA(Gate-All-Around)を同チップに採用し、TSMCに先んじたい考えだ。GAAは、チャンネルに流れる電流をより正確に制御できるうえ、チップ面積と消費電力の削減が可能だ。TSMCは同チップに従来のトランジスタ構造FinFETを続けて採用する。

 サムスンがTSMCと対峙(たいじ)する姿勢を強めている背景には、陣頭指揮を執る李在鎔(イ・ジェヨン)副会長が半導体製造や第5世代通信規格(5G)ネットワークなど次の段階の成長を牽引(けんいん)する先端技術で主導権を握りたい意欲を示していることがある。また、TSMCなどから米アップルやアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)などへの供給権奪取の突破口としたい狙いもある。

 サムスンはメモリーとディスプレー生産では現在世界最大。だが、台湾の調査会社トレンドフォースによると、19年のファウンドリー市場はTSMCが過半のシェアを持つ。サムスンは18%にすぎず、成長が見込まれる市場規模2500億ドルのファウンドリーやロジックチップ(論理回路を組み込んだICチップ)市場でシェアを伸ばしたい考えだ。

 李氏は10月にオランダに飛び、半導体製造装置メーカーASMLホールディングと、最先端の半導体素子の製造に欠かせないEUV(極端紫外線)露光装置の供給についての交渉に臨んだ。他のサムスン幹部も米サンノゼや独ミュンヘン、中国の上海など世界主要都市でファウンドリーフォーラムを開催し、商談を進めている。

 鍵はEUV露光装置

 ただTSMCがシェアの大半を占める市場にサムスンが大きく食い込めるかは一部のアナリストから疑問視する声も上がる。TSMCは技術と製造能力での独走態勢を固めるために年間約170億ドルを費やす。サムスンの半導体部門は20年の投資額260億ドルをこれまで主にメモリービジネスに充ててきたが、メモリー製造に関する全ての専門的技術が先端のロジックチップ製造に直接有用なわけではない。

 また、データ処理の頭脳であるプロセッサー製造はメモリーよりも複雑で、歩留まり率を同じように管理したり向上するのは難しい。加えて、ファンドリーでは委託先との個別対応の設計が求められ、製造能力の迅速な拡大は一層難しい。

 ただ、EUV露光でのチップ製造は、新規投資にかかるリスクとコストで競合が減っている。米インテルは今年、最重要チップ製造の外注を検討していると発表。そうなれば残る主な競合はTSMCとサムスンに絞られる。また、TSMCは多額の資金を投入しても、すべての需要に応じられるほど迅速に製造能力を拡大できず、サムスンの急成長を許している。

 同社幹部はブルームバーグに「現在の最先端、5ナノメートルチップ製造ラインは数年先まで主要な顧客からの注文で埋まっている」と話した。

 SKセキュリティーズのアナリスト、キム・ヤン・スー氏は「TSMCは24年に2ナノメートルチップにGAAを採用の予定。23年後半に前倒しの可能性もある。同社が2ナノメートルチップを生産開始する前の23年にサムスンが実質的に逆転を果たす可能性がある。注文が殺到する状況が予想され、サムスンが市場シェアを拡大できるかは、どれだけ多くのEUV露光装置を確保できるかにかかっている」と指摘する。(ブルームバーグ Sohee Kim)

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