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中国「定年引き上げ」の大問題 年金受給増で財政圧迫、老若ともに怒りの声 (1/2ページ)

 国民の急速な高齢化が進む中国は、公的年金の受給資格を得る定年退職年齢を60歳から引き上げようとしている。こうした方針への国民の不満が広がる中で、共産党の改革実行能力が試される。

 共産党が11月に示した5カ年経済計画の概要には「定年引き上げ実施」の奨励が盛り込まれた。具体的な措置は来年3月に公表される予定だ。

 老若ともに怒りの声

 平均寿命が延びる中で、事務職の男性60歳、女性55歳という中国の定年は40年余り変わっていない。ドイツの保険会社アリアンツが70カ国・地域を対象にまとめた分析によると、定年の世界平均は男性62.7歳、女性61.3歳。

 共産党の発表後、中国版ツイッターの「微博(ウェイボー)」には数十万人が怒りのコメントを投稿。最も多かったのが、年金の受け取り開始が遅れそうだとの定年に最も近い人々からの不満だった。若年層からは年長者の働き手が増えると就業機会が減るとの憤りが寄せられた。

 それでも中国は計画を進める方針だ。政府系の新聞、第一財経日報は11月30日、「定年引き上げが近づいている」とする記事を1面に掲載。当局者の話として、「漸進的で柔軟なアプローチ」が政策立案者のコンセンサスとして浮上したと報じた。当局者の氏名は明示していない。

 専門家らは定年引き上げが年金制度の持続可能性を確保する上で極めて重要だと指摘する。中国の政府系シンクタンク、中国社会科学院(CASS)が昨年公表した推計によると、2019年末に4兆3000億元(約68兆円)あった年金積立金は27年の7兆元をピークに急減し、35年に底をつく。

 定年引き上げは少子化による生産年齢人口の減少の速度を遅らせ、経済成長の維持にも寄与する。中国の60歳以上の人口は昨年末時点で2億5400万人だったが、50年には4億8700万人に達すると当局は予測する。

 反発で棚上げの過去

 中国では1960年代前半にべビーブームが起こり、この時に生まれた2億人以上が今後10年以内に60歳に達する見通しだ。「このため、当局が来年から始まる5カ年計画で定年引き上げを実施することは必然的な趨勢(すうせい)となる」と米カリフォルニア大学アーバイン校の人口統計学者、ワン・フェン教授は指摘する。

 ワン教授は「次の5年間で大量の人口が60歳になる。いま手を打たなければ、国は巨額の財政負担を強いられることになる」と説明した。

 CASSの蔡●副院長(●=日へんに方)は先頃の記者団向けブリーフィングで「現在17%前後である中国の老年人口指数(生産年齢人口に対する老年人口の比率)が2035年までに33%近くまで上昇する」との見方を示した。

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