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「伝統建築工匠の技」無形文化遺産への登録決定 技術の継承へ「新たなスタート」

 技術を守らずして文化財は残せない-。17日に国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産への登録が決まった「伝統建築工匠の技 木造建造物を受け継ぐための伝統技術」。建築技術の近代化など取り巻く環境が変わる中、対象の17技術が絶えないよう各地の保存団体や業者などは継承に努めている。今回の登録が、日本史を彩る建築を支えてきた職人の技に光を当て、価値の再評価につながることが期待される。

 「われわれの業界を一般の人に認識してもらえる機会を与えてもらった」

 寺院や城郭などの屋根に使う瓦の製造や瓦葺(かわらぶき)の技術を継承している「日本伝統瓦技術保存会」(奈良県)の竹村優夫代(まさお)表理事(67)は、今回の登録を喜ぶ。

 これまで同会は、奈良時代に建てられた唐招提寺金堂(国宝)の10年間にわたる「平成の大修理」など数々の修復に貢献してきた。現在も技術の継承のため、2カ月に1度、30~40代を中心とした若手や中堅の職人を対象に研修を実施。ただ、竹村さんは「職人として認められるには10年かかると言われ、技術の取得に時間を要する。将来的には人手不足に陥る可能性もある」と先細りを懸念する。

 懸念の背景にあるのは、近年の文化財に対する社会の関心の低下といい、そのことに竹村さんは最も危機感を抱く。今後さらに文化財保護の意識が薄まれば、すぐに技術も廃れる。「伝統的な建造物を千年先まで残すため、どう業界が生き残るかが重要。ここからが新たなスタートになる」

 彫刻や文様などを色鮮やかに着色する彩色の技術も人材確保が課題だ。栃木県日光市の日光東照宮をはじめ、近隣の多くの文化財を手掛ける「日光社寺文化財保存会」で、彩色主任技能士を務める手塚茂幸さん(48)は、文化財修復に興味を持つ学生の勧誘活動を進める考えという。

 彩色技術では着色に使う顔料と、接着剤の役割を果たす動物の皮などを煮込んで作るゼラチン質の「膠」(にかわ)を混ぜて塗料を作る。状況によって濃度を変えるため扱いが特に難しく、手塚さんは「大学で勉強していた人の方が飲み込みは早い。就職の『ミスマッチ』も起こりにくい」と説明する。

 同会では技術の継承のため、技術者の年代がばらつくように採用する方針を取っているが、なかなか思い通りにいかないという。彩色業界全体の状況についても「全国の修復現場に出張続きとなることも多いだろうから、若い人は嫌がるかも」と人材確保の難しさを指摘。今回の登録で状況が上向くことを期待する。

 一方で、絵画や古文書の修理、保存に取り組む「国宝修理装●(=さんずいに黄)(そうこう)師連盟」(京都市)は近年、技術者の活躍の場が減っていることを課題に挙げる。直近では追い打ちをかけるように、新型コロナウイルスの影響により、資金不足で修理を行えない寺社もあるという。

 技術者が一人前となるには約10年かかるというだけに、同連盟の山本記子(のりこ)代表理事(63)は「今回の登録を機に技術を実践し、評価してもらえる場が増えれば」と話している。

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