高論卓説

短編映画「香港画」のリアリティー 獄中のアグネスたちに思いを寄せよう (1/2ページ)

 まもなくクリスマスだ。例年なら香港は街中が華やかなイルミネーションに包まれる時期だが、今年は新型コロナウイルス問題で夜間の会合は制限され、静かな聖誕祭になりそうだ。もっと悩ましいのは、民主派勢力への風圧が強まっていることである。特に今年6月末に国家安全維持法が導入された後に起きたことは「弾圧」と呼ばれても仕方がないレベルになっている。「高度な自治」が保障された香港で、このようなことが起きるとは残念極まりない。

 香港にとっては暗い一年となったその年末25日から、2019年の抗議運動をテーマにしたドキュメンタリー映画が東京・渋谷や吉祥寺で上映される。タイトルは「香港画」。28分という短編だが、毎回の上映でトークイベントを予定している。

 堀井威久麿監督は昨年10月20日、香港に偶然仕事で立ち寄った際、ネイザン・ロードでのデモに出くわし、夢中でカメラを回した。日本に戻って前田穂高プロデューサーと相談して作品を撮ることを決め、リサーチを重ね、11月19日から1月1日まで長期の現地取材を敢行した。一連の抗議運動で最大の山場となった香港理工大学での警察とデモ隊との攻防などもカメラに収め、「香港の1日」を観客が再体験できるように編集されている。

 2人とも香港の専門家ではない。試写で作品を見たが、だからこそストレートに被写体の行動と言葉を拾っていると感じた。あくまでまっすぐに、デモの主役であった香港の若者という被写体を追いかけることに専心している。警察のデモ隊への暴行、勇武派の破壊行為、痛々しい若者の独白。どれも特定の価値観で狙いをつけた形で切り張りされておらず、逆にリアリティーを見る者に突きつける内容になっている。

 前田さんは「解説的なものをできるだけ排除し、現地の人たちの感情にフォーカスしました。『あの時、あの場所』にいた人たちの群像劇を俯瞰(ふかん)的に伝えたかった」と話す。

 ドローンの撮影なども活用して香港の美しさもデモの現場の凄惨(せいさん)さと対照的に演出している。「香港画」というタイトルには美的な表現行為という意味も込めた。いま香港人が自分たちのことをチャイニーズではなく、ホンコンガー(Hong Konger)と呼んでいることにも掛け合わせている。

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