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新型コロナ変異種感染が拡大 往来緩和、迫られる軌道修正

 英国での新型コロナウイルス変異種の感染拡大を受け、日本政府も水際対策の強化に乗り出した。今回は英国からの入国者に限った措置だが、必要に応じて他の国についても機動的に対応を検討する構えだ。経済立て直しのため、国際的な人の往来の緩和を続けてきた政府方針は、一定の軌道修正を迫られつつある。

 「コロナの国内蔓延(まんえん)を防ぐため、機動的に水際対策を講じていきたい」。加藤勝信官房長官は23日の記者会見で、今回の措置についてそう表明した。

 政府は23日のコロナ分科会でも専門家らに水際対策の強化を報告。メンバーの1人は「今回の措置で、英国からは日本人と永住資格を持っている人以外は入ってこれなくなる。現状でとりうる施策としては適切ではないか」と評価した。

 欧州疾病予防管理センター(ECDC)の分析によると、変異種は従来型より感染力が最大で7割増と推定されている。これまで英国のほか、デンマークやベルギー、豪州などでも確認された。

 今のところ国内への流入は確認されていない。国立感染症研究所は空港検疫を含め、国内感染者の約1万4500検体について遺伝子を確定したが、その中には含まれていない。

 とはいえ、関係者の危機感は高まっている。厚生労働省に助言する専門家組織の22日夜の会合でも、変異種の分析に多くの時間を割いた。会合では、感染力の7割増が事実なら「何をやっても感染拡大を抑えられない事態になる」(出席者)との分析も内々に示されたという。

 政府は「経済再生のためには国際的な人の往来の再開が不可欠だ」(菅義偉首相)として、主にビジネス客や中長期の在留資格を持つ外国人を対象に入国制限を段階的に緩和してきた。日本政府観光局のまとめでは、11月の訪日外国人数(推計値)は前年同月比97・7%減の5万6700人。しかし往来緩和の方針も、変異種の登場で一定の見直しを迫られている。

 政府は「Go To トラベル」事業の見直しでは後手に回ったとの批判を受けており、今回は迅速に対応に動いた。しかし英国以外で変異型の感染が拡大した場合、さらなる措置が必要となる可能性がある。加藤氏は記者会見で「一定のデータや分析結果がないと判断できない。必要な情報を収集し、迅速に対応していく」と強調した。

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