海外情勢

中国が東南アジアに押し売りする「中国製コロナワクチン」の怪しい背景 (1/2ページ)

 欧米で新型コロナウイルスのワクチン接種が始まった。一方、中国でもワクチン開発が進んでおり、一部の国では中国製ワクチンの接種が始まっている。しかしこのワクチンは中国国内ではまだ承認されていない。中国はなぜそこまでワクチン輸出を急ぐのか。在英ジャーナリストのさかいもとみ氏がリポートする--。

 中国では未承認だが、UAEで先行して承認

 新型コロナのワクチンをめぐっては、英国で2日、米ファイザーと独ビオンテックが共同で開発したワクチンが世界で初承認され、すでに10万人を超える市民が1度目の接種を済ませた。次いで、米モデルナ製ワクチンに対し、米食料品医薬局(FDA)が緊急使用を許可した。

 一方、中国でもワクチン開発が進められている。現在までに、中国国外で5種類のワクチンの臨床試験が行われている。そのうちシノファーム製ワクチンは、12月9日にアラブ首長国連邦(UAE)で世界で初めて正式承認された。

 「世界で初めて」とは、中国でも承認されていないということだ。シノファーム社はUAEでの臨床試験を7月に実施。9月にはすでに緊急使用の認可をUAE政府から取り付けていた。UAEでの臨床試験では「86%の有効性が確認された」とされている。

 インドネシアは120万回分を輸入したが…

 中国はこのような「ワクチン外交」に積極的だ。例えば死者数、感染者数が東南アジア最多となるインドネシアは、12月中に中国・シノバック製のワクチン120万回分を輸入。さらに1月以降に180万回分が到着する運びだという。

 中国製ワクチンの安全性を危惧する声も広がっているが、インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は「自らがワクチン接種の第1号となる」と国民向けに動画で呼びかけ、不安の払拭(ふっしょく)に努めている。

 東南アジア各国にとって、中国の存在は外交的に非常にセンシティブな存在だ。中国は南シナ海の領有を主張する「九段線」を設け、さらに人工島に「空港」を設置するなど、存在感を高めている。

 インドネシアも例外ではない。最近も中国漁船がインドネシアの排他的経済水域(EEZ)へ侵入するトラブルがあった。しかしルトノ・マルスディ外相は「中国とのワクチンでの協働は、政府の南シナ海政策に影響を与えるものではない。それとこれとは別の話」と明言。ワクチンの導入を積極的に行うという立場を明確にした。

 「一帯一路」関係国に売る中国の狙い

 中国は「一帯一路」のスローガンを掲げ、国際的なインフラ投資計画を複数国との間で繰り広げている。中国は資金力の弱い国に融資を進め、港湾や鉄道、道路などの建設を持ちかけ、社会インフラの強化を進めている。しかし、建設費の返済ができなくなると、建設したインフラそのものを中国が債権として押さえるという事例もあり、各国で問題視されている。

 同じように中国は、「資金力の弱い国」にワクチンの提供を提案している。これについてAFP(12月17日)は「気前の良さは100%利他的なものとはいえない。中国政府が求めているのは外交上の長期的な見返りだ」と指摘。つまり、一帯一路で中国が行った「多額の融資と債権の取り立て」と同じようなことがやがて「ワクチンの見返り要求」という形で起きる懸念があるというわけだ。

 AFPは記事で「この戦略には、新型コロナ流行初期の中国政府の対応への怒りや批判をかわし、中国のバイオテクノロジー企業の知名度を上げ、アジア内外での中国の影響力を強化・拡大するなど、複数のメリットがある」と述べ、中国がワクチン外交を今後強力に進めていくのではないか、という見方を示している。

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