海外情勢

中国が米次期政権にらみ「ワクチン外交」着々 東南アジアで連携強化

 【シンガポール=森浩、北京=三塚聖平】中国の王毅国務委員兼外相が東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国を歴訪し、新型コロナウイルス対策をめぐってワクチン外交に乗り出した。自国産ワクチンの供与など医療面での支援を約束。バイデン米次期政権が20日に発足するのを前に、先手を打ってASEAN加盟国との関係を強化したい思惑がある。

 王氏は11~16日の予定でミャンマー、インドネシア、ブルネイ、フィリピンを訪問している。11日にはミャンマーでアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相と会談し、中国製ワクチン30万回分や医療機器の提供を申し入れた。ミャンマーは英アストラゼネカが開発し、インド企業が生産するワクチンの購入を決定していたが、割って入った形だ。

 王氏は13日にはインドネシアでジョコ大統領と会談した。インドネシアは王氏訪問に合わせるように中国の製薬大手、科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)のワクチンの緊急使用を許可し、ジョコ氏自身が接種第1号となった。王氏はインドネシアの対応を「地域の国と、発展途上国のワクチン協力の手本となる」と称賛し、中国からの投資拡大に前向きな姿勢も示した。

 王氏が訪問先に含めたブルネイは今年のASEAN議長国。ミャンマーはASEANの対中対話窓口役になる。南シナ海の紛争抑止に向けて中国とASEANが進める「行動規範」の策定作業が難航する中、特に関係を深めたい相手だ。

 王氏は4~9日にはアフリカ5カ国を訪問しており、中国は米国の新政権発足前に急ぐように各国との連携強化を図っている。王氏は訪問先のインドネシアで、米新政権について「再び多国間主義に戻ることを国際社会が期待している」と牽制した。

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