海外情勢

バイデン政権、トランプ色払拭 パリ協定復帰にパイプライン撤回…政策転換急ぐ

 昨年の米大統領選で勝利した民主党のジョー・バイデン氏が20日、第46代大統領に就任した。バイデン氏は就任後ただちに、地球温暖化対策の国際的な取り決めであるパリ協定への復帰を国連に通知したほか、カナダと米国を結ぶ大型パイプラインの建設計画を撤回するなど、エネルギー・環境分野を中心にトランプ前政権による政策の巻き戻しに動いた。

 バイデン氏は同日正午(日本時間21日午前2時)前に連邦議会議事堂前で就任宣誓を行った後の演説で「赤(共和党)と青(民主党)、地方と都市、保守とリベラルの間で繰り広げられる無意味な争いを終わらせなければならない」と語り、国民の結束を強く呼び掛けた。

 国際協調復帰示す

 多数の死者を出している新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)や長引く失業、急速に高まりつつある社会不安といった困難に見舞われる中、近年の米国史で最も険悪となった政権移行を乗り越えて国家を主導することになる。

 バイデン氏は就任直後、パリ協定復帰の申請文書に署名し復帰を国連に通知した。復帰は30日後に発効する。

 パリ協定は、トランプ氏が米国の競争力に悪影響を及ぼす「大災難」として協定離脱を決めた。気候変動問題への国際的取り組みに米国が復帰したことを世界に知らしめるシグナルになる。

 バイデン氏は環境問題への取り組み強化策として、北極圏国立野生生物保護区(ANWR)の鉱区リース権付与も一時停止した。一連の行動はエネルギーや環境に関して産業界寄りのアプローチを取ったトランプ氏への強烈な非難にもなる。

 バイデン氏は20日の大統領令で「公衆衛生に有害で環境に打撃を与え、最善の利用可能な科学の裏付けがないか、国の利益に合致しない」トランプ政権時代の政策を検証し対応するよう連邦機関に指示した。

 一方、バイデン氏はカナダのTCエナジーに与えていた同国の油田と米メキシコ湾岸の製油所を結ぶパイプライン「キーストーンXL」の建設認可も撤回した。米国で大型の新規パイプライン建設が不可能になったことを明確に示した形だ。

 キーストーンXLは2015年にオバマ大統領(当時)が環境面の懸念から却下したが、17年にトランプ前大統領が就任早々に覆し、認可していた。

 TCエナジーは認可撤回に「失望した」とし、同プロジェクトの作業を停止すると発表した。労働者数千人のレイオフにつながる見通し。

 バイデン氏は選挙遊説中から撤回を公約していたが、正式撤回により、同プロジェクトを支持する石油業界首脳やカナダの利害関係者、労働組合などから激しい憤りの声が上がった。

 カナダの石油産業の中心地、アルバータ州のケニー首相は20日記者会見し、認可撤回を「侮辱だ」と非難し、同国のトルドー首相に対し、米国への報復を検討するよう要請した。同州政府は昨年、同プロジェクトを後押しするため11億ドル(約1140億円)の公的資金を投入していた。

 トルドー首相は声明で「気候変動との闘いへのバイデン大統領のコミットメントは歓迎するが、われわれは失望している」とコメントした。

 米国の多くの地域ではパイプライン建設は石油・ガスの掘削よりもはるかに難しいビジネスだ。連邦・州政府当局から多くの許可が必要で、訴訟を起こされやすい。トランプ政権は連邦政府による許可の合理化を目指したが、多くのプロジェクトは法廷で致命的な打撃を受けてきた。

 フィスカルノート・マーケッツのマネジングディレクター、ケイティ・ベイズ氏は「バイデン大統領の任期中は誰もパイプライン新設を発表しないだろう」と予想した。

 ロビー活動厳格制限

 バイデン氏による政策巻き戻しの対象はエネルギー・環境分野だけではない。企業のロビー活動についてのルールも改め、オバマ元大統領やトランプ前大統領よりも強力な制限を課す。

 政権入りする上級顧問が以前の勤務先から多額の賞与を受け取ることを禁じる。政権を担う高官が退任後に元同僚に影響力を行使しようとしたり、ホワイトハウスの上級職員に圧力をかけたりすることも禁じる。ホワイトハウスが取り上げる問題に企業が影響を及ぼそうとするロビー活動を抑える狙いだ。

 こうした制限は、元当局者がロビイストらにホワイトハウスや以前勤務した機関にいかに影響を及ぼすかを助言する「影のロビー活動」にも適用される。

 トランプ氏は大統領退任の数時間前、政治任用の当局者が5年間勤務した機関に退任後に圧力をかけることを禁じる政権の倫理誓約を撤回した。

 バイデン氏は移民政策でも巻き戻しを行い、メキシコ国境の壁建設を停止するよう命じる布告を出した。イスラム教徒が多数を占める一部諸国からの渡航・移民規制を解除する大統領布告にも署名した。国務省に対し、これらの国へのビザ(査証)発行手続きの再開や、米国への入国を拒否されるなど規制で影響を被った人への対応策を命じる内容だ。

 さらに、トランプ前政権が活用した他の厳しい審査慣行の見直しを指示する一方で、旅行者のスクリーニング強化に向け外国政府との情報共有の拡充も命じた。バイデン氏は米国内の約1100万人の不法移民に米市民権獲得の道筋を開く移民法案を提示している。(ブルームバーグ Justin Sink、Jennifer A.Dlouhy)

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