海外情勢

コロナ後の経済回復は緩慢 債務膨張・格差拡大、世界に逆風

 新型コロナウイルスが今後終息したとしても、その後の世界経済の回復の足取りは緩慢になる見通しだ。各国・地域の政府が実施した経済対策によって膨張した巨額の公的債務と企業・家計部門の債務、さらには格差の拡大が、経済の復調に逆風になるためだ。

 過去最大277兆ドル

 3~5日に行われた米国経済学会(AEA)の年次会合で経済専門家の多くが、世界経済の先行きに警鐘を鳴らした。

 ラジャン元インド準備銀行(中央銀行)総裁は「私たちは最近のあらゆる危機に対し、中央銀行による金融緩和に加え、政府・民間ともに借り入れを増やして対応してきた」とした上で「ただ、本当の問題は、これが負のスパイラルなのかどうかだ」と指摘した。

 世界の主要金融機関が加盟する国際金融協会(IIF)によると、昨年末時点の世界の債務残高は過去最大の277兆ドル(約2京8740兆円)に達し、世界の国内総生産(GDP)合計の約3.65倍となった。政府から企業、家計に至る全部門の負債が急増した。

 これに加え、新型コロナパンデミック(世界的大流行)は特に貧困層に深刻な打撃を与え、米国内外で格差を拡大させている。米国では新型コロナによる死者数は黒人やヒスパニック系が白人よりも多く、レジャーや接客業の低賃金労働者が解雇の矢面に立たされる一方、裕福な人々は在宅勤務を続けている。

 ノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・スティグリッツ氏は「パンデミックは深刻な格差を浮き彫りにし、各方面での不平等を悪化させた」と指摘した。

 米国などの高所得国は多額の財政出動により国民への打撃を緩和しているが、低所得国はそれができていない。スティグリッツ氏によると、世界の12兆7000億ドルのコロナ対策関連の財政支出のうち後発開発途上国46カ国が占める割合はわずか0.002%にすぎない。

 ハーバード大学教授で国際通貨基金(IMF)の元チーフエコノミストであるケネス・ロゴフ氏は「コロナ後は不平等の削減に向けた各国の数十年間の努力が多方面で後退することになるだろう」と指摘した。

 コロナ禍がもたらした良い変化もある。ワクチンの開発スピードや遠隔医療分野の急速な成長は称賛すべき発展だ。

 米スタンフォード大学のニコラス・ブルーム教授はコロナ後も在宅勤務が定着し、自宅で仕事する時間が増えることで生産性が向上する可能性があると指摘する。ラジャン氏は富裕層が広い家を求めて都市から地方へ移住する動きが広がる中、米国の農村部が恩恵を受ける可能性があると話す。

 収入減で返済困難

 一方で、パンデミック以前から拡大していた債務と格差は二重の打撃となってコロナ後の世界経済を脅かす恐れがある。

 世界銀行のチーフエコノミストを務めるカーメン・ラインハート氏によると、米国の低所得世帯の大半が多額の負債を抱えており、住宅ローンや家賃の支払い猶予措置が終了すると、家計が圧迫される可能性がある。

 一部の新興国や低所得国では問題はさらに深刻だ。スティグリッツ氏は「債務危機が全世界に波及するリスクがある」と予想しており、「多くの国はパンデミック前から既に多額の債務を抱えていた上、収入が激減しているため、返済が困難になるだろう」とみている。

 米大統領経済諮問委員会(CEA)委員長を務めたクリスティーナ・ローマー氏によると、コロナの終息次第、米国などの裕福な国々は急増した公的債務を抑制するための措置を取らざるを得なくなる見込みだ。

 米国の非営利団体「責任ある連邦予算委員会」によると、同国の2021会計年度(20年10月~21年9月)の連邦財政赤字はGDP比10%以上となる2兆3000億ドルに達する見通しだ。

 ローマー氏は「このコロナ禍に私たちは財政の正常化にかじを切らなければならない。次にどんな危機が起きても対処できるよう、主に債務を削減する必要があるだろう」と語った。(ブルームバーグ Rich Miller)

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