海外情勢

EUがEV電池囲い込み、テスラやBMWなど42社 29億ユーロ支援承認

 欧州連合(EU)は26日、域内の電気自動車(EV)生産強化に向けた車載電池(バッテリー)にかかるプロジェクトで、米テスラや独BMWなど複数の企業を対象とする約29億ユーロ(約3700億円)の公的支援提供を承認した。

 EUの行政執行機関である欧州委員会は、公的支援がその3倍余りの民間投資を呼び込むきっかけとなり、域内バッテリープロジェクトへの総投資額が約120億ユーロになると見込む。

 アジア依存度を低減

 EUは域内の競争を阻害する恐れのある国家補助を原則禁止している。欧州委は2019年12月、「欧州共通利益に適合する重要プロジェクト(IPCEI)」の一環としてバッテリープロジェクトに対する32億ユーロの国家補助を承認しており、今回はそれに続く案件だ。28年までに完了予定のプロジェクトに対し、フィンランドやスペイン、フランス、ポーランドなどの国々が国家補助を拠出する。

 支援対象となるのは複数の国にわたる42社で、フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)と仏グループPSAの合併で誕生したステランティスや、スウェーデンのスタートアップ企業ノースボルトも含まれる。

 プロジェクトは原材料の抽出、バッテリーセルとパックの設計・製造、リサイクル、廃棄と、バッテリーバリューチェーン全体をカバーする。今回の支援は、種々の電池化学や新手の生産工程、その他の技術革新など、さまざまな技術の進展に寄与することが期待される。

 EUは「欧州グリーンディール」の下で、50年までに温室効果ガスの排出量が実質ゼロになる「カーボンニュートラル」を目指しており、EV向けバッテリー調達でアジアメーカーへの依存を減らしたい考え。欧州委によると、欧州バッテリー市場の規模は25年までに2500億ユーロに達し、自動車産業の需要に対応できる見通しだ。欧州グリーンディールは脱炭素とともに新型コロナウイルス禍による景気後退から回復するための成長戦略の主な柱と位置付けられている。

 欧州委のシェフチョビッチ副委員長は「欧州は一連の施策でバッテリー投資の世界的なホットスポットとしての地位を固める。この汎欧州プロジェクトはバッテリー市場に大改革をもたらすうえで一役買うことになる」と強調した。

 基準厳格で投資殺到

 欧州の厳格な汚染基準が自動車メーカーにEV採用と二酸化炭素(CO2)排出量の抑制を強いたことで、域内にはバッテリーへの投資が殺到している。ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)は欧州における今年のプラグインハイブリッド車(PHV)、EVの販売台数を190万台と予測しており、これは中国を上回り、北米の予想販売台数のほぼ4倍に相当する。

 米EV大手テスラのマスク最高経営責任者(CEO)は独ベルリン近郊に建設中のEV組立工場で自社向けのEV用バッテリーを生産する計画を明らかにしている。昨年11月の会議で、同氏はバッテリーの年間生産能力を生産開始時の100ギガワット時強から、最終的には250ギガワット時まで引き上げると説明した。

 欧州自動車大手では、PSAが昨年9月に仏石油大手トタル傘下の電池大手サフトとともにオートモーティブ・セル・カンパニー(ACC)という合弁会社を設立。ノースボルトは独フォルクスワーゲン(VW)と工場を建設するほか、独BMWとも数十億ユーロ規模のバッテリー購入で契約した。

 一方、韓国のLG化学、日本のパナソニック、中国の寧徳時代新能源科技(CATL)などのアジア勢も、EUでの事業立ち上げ、あるいは拡大の方針を示している。(ブルームバーグ Ewa Krukowska、Tara Patel)

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