海外情勢

EUが「英国優先?」に怒り、白熱の“欧州ワクチン戦争” スペインでは接種停止も 

 【パリ=三井美奈】欧州連合(EU)のキリアキデス欧州委員(保健衛生担当)は27日、新型コロナウイルスのワクチンで、英製薬大手アストラゼネカがEUへの供給削減を通告したことを批判し、「約束を守るべき」と迫った。同社が英国への供給を優先したとの見方も浮上し、欧州で「ワクチン戦争」が白熱している。

 キリアキデス氏は27日の記者会見で、昨年8月に欧州委が同社と事前合意を交わしたことを強調し、「生産能力に達しなかった、というのは文書に反する」と述べた。さらに、「先に決めたところに先に供給するという理屈は拒否する」として、EUより早く合意を交わした国に供給を優先するのは不当だと主張した。

 キリアキデス氏の発言は、アストラゼネカ幹部が今週、欧州メディアで行った発言を受けたもの。この幹部は「英国は、EUより3カ月早くワクチンを契約した。このため(英国向けは)供給ラインを改善する余裕があった」と述べ、供給体制は英国とEUで格差があると認めた。さらに、EUとの事前合意について、「われわれは最善を尽くすと言ったが、将来の成功を約束したわけではない」と欧州委に反論した。同社は英国やオランダ、ベルギーに生産拠点を持つ。

 EUでワクチンが逼迫(ひっぱく)する中、英国のジョンソン首相は27日、下院で「すでに680万人にワクチンを接種した。欧州で、どの国よりも多い」と述べ、国内の接種計画が順調に進んでいると強調した。

 EU域内では今月、米製薬大手ファイザーも、ベルギー工場の改変のために一時供給を削減すると発表。スペインのマドリード州政府は27日、2度目の接種ができなくなる恐れがあるとして、ワクチン接種を2週間、停止することを決めた。欧州委はワクチンの域外流出の歯止めとして、輸出を規制する方針を表明している。フランス製薬大手サノフィは27日、自社ワクチンの開発が遅れる中、ドイツ工場でファイザーのワクチン生産を支援すると発表した。

 EUでは現在、ファイザー、米バイオ企業モデルナの2種のワクチンが接種されている。アストラゼネカのワクチンは今月末に域内での販売が認可される予定で、欧州委は最大4億回分を調達する事前合意を交わしている。

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