海外情勢

カンボジアに少子高齢化の足音 人口1555万人に増加も出生率低下

 カンボジア政府は1月26日、2019年の国勢調査の結果を発表した。それによると、カンボジアの人口は約1555万人で、前回08年の調査時よりも約215万人増えた。人口構成は、若年層が多く高齢者が少ない「釣り鐘型」ではあるが、合計特殊出生率もやや下がり、政府は「カンボジアでも少しずつ少子高齢化が始まっている」としている。

 中位年齢が5歳上昇

 カンボジアの国勢調査は1998年に内戦終結後初めて実施されたが、この時はまだ国内の政情が不安定であり、一部の地域では調査が行えなかった。その後、日本の国際協力機構(JICA)などの支援により、2008年に全国規模の調査が実施された。その後、13年に中間年人口調査が実施されたが、国勢調査としては08年以来で、19年3月現在の状況が調査された。

 19年調査の結果によると、総人口は1555万2211人。08年の約1340万人より約215万人増えた。また、戦後初の国勢調査だった約20年前からは約420万人増加した。男性は約757万人で48.7%、女性は約798万人で51.3%だった。

 また、女性100人に対する男性の人数で示す男女比は約95だった。カンボジアは、1970年代のポル・ポト政権下とその後の内戦で多数の国民が命を落とした特殊な事情があり、80年代の調査では男女比が86程度にまで落ちていた。しかし、現在は男女比が正常に戻ってきていることが分かる。

 人口を年齢別にみると、0~14歳の年少人口は29.4%、15~59歳の生産年齢人口は61.7%、60歳以上は8.9%だった。前回2008年の調査と比べると、年少人口は33%からやや減少し、生産年齢人口は60%から増加、高齢人口も6.3%から増加している。中位年齢は27歳で、08年の22歳から大幅に上がった。日本の中位年齢は48歳で、中位年齢が上がったとはいえ、まだカンボジアが若い国であることが分かる。

 1人の女性が生涯に産む子供の数である合計特殊出生率をみると、08年には2.7だったが、今回の調査では2.5に下がった。一方で、1000人当たりの死亡者数でみる乳児死亡率は、08年の26から18に下がり、母親の出産時死亡率も08年には10万人に対し461だったが、今回は141にまで改善している。ただし、乳児死亡率については、都市部では16、農村部では19と違いがある。出産環境について全体的な底上げがあるものの、国内で格差があることが浮き彫りになった。

 教育面では、7歳以上の識字率を調べたところ、88.5%だった。また、6~14歳の子供のうち90.6%が学校に通っていることも分かった。しかし、高校以上の年齢になると通学率は下がり、高校生に当たる15~17歳で67.6%、大学生に当たる18~24歳で20.7%だった。小学校・中学校の教育は以前より浸透してきたものの、高校以上の高等教育についてはまだ十分に機会が行き渡っていないことが分かる。

 1世帯4.3人に減少

 カンボジアの社会の変化を表すデータの一つが、1世帯当たりの人数だ。1998年は1世帯当たりの人数は平均で5.2人だった。しかし2008年には4.7人に減り、さらに今回の調査では4.3人に減った。「3世代以上の大家族」が多かったカンボジアだが、徐々に1世代の核家族に変化してきているようだ。また、カンボジアの場合、都市部の方が1世帯当たりの人数が多くなっている。都市部や外国へ出稼ぎに行く人が増え、農村部の世帯構成に変化があったことが考えられる。今回の調査でも、都市部の平均世帯人数は4.4人、農村部は4.2人だった。

 カンボジア政府は新型コロナウイルス禍の経済政策として、国内産業の振興、なかでも農業の近代化が経済成長の鍵となるとして取り組んでいる。もともと国民の7割以上が農業に従事していたカンボジアだが、その割合は今では5割以下に減っている。今回の調査でも、都市部と農村部の格差が改めて示されており、こうした格差の是正がフン・セン政権の課題となっている。(カンボジア邦字誌「プノン」編集長 木村文)

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