海外情勢

英加入で対中連携を再構築 TPP、米復帰不明もブランド価値向上

 英国が環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への加入を申請し、11カ国が参加する現行枠組みの拡大に向け前進した。英参加を後押しする日本が、その先に見据えるのは将来的な米国のTPP復帰だ。トランプ米政権時代に揺らいだ対中連携を再構築し、同盟国の手で高いレベルの通商ルール作りを主導する戦略を描く。

 欧州連合(EU)離脱から1年となるタイミングでの表明だった。「莫大(ばくだい)な経済的利益を英国の人々にもたらす新たな関係を築く」。ジョンソン英首相はTPP加入の意義をこう強調した。

 EUから離脱した英国では賛否両論が今も渦巻く。ジョンソン政権はTPPを独自の通商戦略の柱に据え、EU離脱の果実と位置付けたい考えだ。地理的には環太平洋地域に位置しないが、TPP参加11カ国のうちカナダやオーストラリアなど6カ国が英連邦に含まれ、英国との結び付きが強いという事情もある。

 日英間では1月1日に経済連携協定(EPA)が発効したが、英国がTPPに加入すれば、日本企業にとってもメリットはある。関税削減や、その対象を定める原産地規則といったルールをめぐり、TPPとEPAの間で自社に有利な協定を適用でき「選択肢が増える」(日本政府関係者)ことになる。

 日本がTPP拡大を目指すのは、ルールに基づく自由貿易圏の広がりが通商立国としての基盤強化につながるためだ。

 TPPは中国も加わって昨年署名に至った地域的な包括的経済連携(RCEP)に比べ、関税撤廃率や貿易・投資ルールの自由化水準が高い。日本政府は「英国の加入でTPPのブランド価値が向上し、さらなる参加国の増加につながれば」(交渉筋)と期待する。

 英国の加入申請は、トランプ氏が去りバイデン米政権が発足したタイミングとも重なった。TPPは牽引(けんいん)役だった米国が離脱する一方、中国が昨年にわかに参加意欲を表明するなど、日米が当初意図した「対中包囲網」の位置付けが揺らいでいる。

 日本の期待をよそに、国内経済の回復を優先するバイデン米政権はTPPへの早期復帰に消極的だ。ただ中国に対しては同盟国と連携して対抗する構えで、日本やインド、オーストラリアとの4カ国連携を推進する姿勢を見せている。

 みずほ総合研究所の菅原淳一主席研究員は、英国のTPP加入申請に関し「4カ国連携に英国も加わり、インド太平洋の経済秩序作りが始まるステップになり得る」との見方を示した。 (東京、ロンドン 共同)

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