国内

入院できない透析患者も…高い重症化リスク、関係機関は「医療崩壊」指摘

 透析を受けている人が新型コロナウイルスに感染した場合、入院先が見つからない事例が都市部で相次いでいる。重症化リスクが懸念される透析患者は感染が分かれば入院が原則だが、医療逼迫(ひっぱく)に伴う厳しい現状もあり「医療崩壊と呼べる状況」(関係機関)。リスクと直面する患者は、「できることは基本的な対策しかない」と話している。

 「会員から感染への不安の声が寄せられている。透析患者が安心して治療できるよう、早急な対応を願いたい」

 透析患者を中心とする腎臓病患者らでつくる「全国腎臓病協議会」(全腎協、東京)の金子智事務局長が訴えた。

 透析患者は全国で約34万人。一方、基礎疾患のある人は新型コロナでの重症化リスクが高いとされ、厚生労働省は具体的な疾患として慢性腎臓病や糖尿病、高血圧などを挙げている。金子事務局長は「コロナ感染せぬよう、患者の皆さまにも細心の注意を呼びかけている」とする。

 「できることは基本的な対策しかない」と話すのは、数年前から透析を続ける東京都杉並区の遠藤昭平さん(33)。「マスク着用や消毒の徹底、大人数での会食をしないなどを心がけている」と述べた。

 関係機関の危機感は大きい。日本透析医会などでつくる新型コロナウイルス感染対策合同委員会は、透析医療への「提言」を公表。「新規感染者がこれまでにない増加をみせている。透析領域では医療崩壊と呼べる状況だ」などとの認識を示した。

 合同委によると、昨年12月11日時点で426人だった透析患者の感染(累計)は、今年1月28日時点で988人に上った。緊急事態宣言の再発令をはさみ、1カ月半で2倍超となった計算だ。また同日までに、感染者の約11%にあたる113人が亡くなっていた。

 厚労省は透析患者の重症化リスクの高さを踏まえ、無症状や軽症でも入院治療を原則としている。しかし首都圏や大阪、愛知などの都市部では、患者急増に伴う医療の逼迫が続く。こうした現状を受け、合同委は「透析患者の原則入院が保てなくなっている」と指摘した。

 大阪府によると、透析に対応するコロナ用病床は、府内でも63床(1月28日時点)にとどまる。府は上積みできるよう、関係機関との調整を続けるとしている。

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