海外情勢

ミャンマー政変、米新政権に試練 「制裁復活辞せず」も近隣諸国の動き鈍く

 ミャンマーで1日発生した軍事クーデターはインド太平洋との関わりを約束したバイデン米大統領に就任早々、試練を与えることになった。バイデン大統領は同日、民主主義擁護に向け対ミャンマー制裁の復活も辞さないと表明した。しかし、同国の民主化復権には、アジアで権威主義的な政治体制をアピールしミャンマー国軍幹部とのつながりも深い中国が立ちはだかり、アジア近隣諸国の反応も鈍い。

 民主化、大きく後退

 クーデターでアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相ら政府指導者を拘束し、1年間の非常事態を宣言したミャンマー国軍は、スー・チー氏率いる与党・国民民主連盟(NLD)が圧勝した昨年11月総選挙の結果を無効とした。同国の民主化は大きく後退することになった。

 国軍トップのミン・アウン・フライン総司令官は、不正選挙疑惑により選挙結果を無効にし、非常事態解除後に「自由で公正な総選挙」を実施すると表明。11人の閣僚を任命したと明らかにした。軍出身のミン・スエ臨時大統領は今週の新議会召集前に行動が必要だとして、同総司令官に全権を移譲した。

 国軍に拘束されたスー・チー氏はフェイスブックに掲載された声明で、国民に国軍の動きに反対するよう呼び掛けた。

 バイデン大統領は1日の声明で、軍がクーデターにより掌握した権力を直ちに手放し、拘束された活動家や当局者を釈放するようミャンマー国軍に要求。ミャンマーの民主化に向けた進展を踏まえて米国は制裁を解除したが、「その進展が逆戻りすれば、われわれとしては制裁に関する法律や権限を直ちに精査し、適切な行動を起こす必要性が生じる」と指摘し、制裁を復活させる可能性があると述べた。

 中国の台頭に対抗する上で米国の戦略上重要な部分は、中国の共産党一党支配に対し、「自由で開かれた」地域を支援するためにアジアに民主主義を回復させる取り組みにあった。だが、トランプ前政権下でタイやマレーシアなどでは民主主義擁護者が結果を出せず、失墜している。そうした中でバイデン大統領は、ミャンマーの国民に損害を与えずに軍幹部を罰する方策でジレンマに陥っている。

 立ちはだかる中国

 一方、ミャンマーと蜜月関係にある中国は国軍への批判を避けた。外務省の汪文斌報道官は1日の記者会見でミャンマーを「友好的な隣国」と呼び、「ミャンマーの各方面が相違点を適切に処理する」よう求めた。

 巨大経済圏構想「一帯一路」で要所を占めるミャンマーに対し、中国は存在感を一段と強めている。昨年末時点で中国からミャンマーへの外国直接投資認可額は215億ドル(約2兆2577億円)とシンガポールに次ぐ2位。また、中国はミャンマーの貿易額の約3分の1を占め、米国の約10倍以上に上る。

 東南アジアに対する中国の影響力に関する著書があるセバスチャン・ストランジオ氏は「東南アジアにおける最近の出来事は、中国の影響力の拡大と西側諸国における民主主義の堕落に伴い、同地域に規範的なアジェンダを設定する道徳的権威や経済的・政治的手段が米国や他の西側諸国にはもはやないことを示している」と指摘する。

 英国やオーストラリア、カナダ、欧州連合(EU)は米国のミャンマー批判に賛同した。これとは対照的にアジア各国は控えめな反応にとどまっている。同地域の大半の国々はミャンマーが軍事政権下の時代からビジネスを続けており、ここ数年は日本などの国々がタイに代わる製造拠点としてミャンマーに投資している。(ブルームバーグ Khine Lin Kyaw、Philip J.Heijmans)

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus