データで読む

ベトナム、為替操作国指定で対米輸出へ影響懸念

 米国は、2020年12月に新たにベトナムとスイスを為替操作国に指定した。米財務省が半年ごとに発表する為替報告書は、近年は貿易交渉で対立する中国を恣意(しい)的に指定したことで話題になったが、今回は対米貿易黒字や経常黒字、および継続的かつ一方向の為替介入という3基準に沿った認定であった。また、並行して調査を進めた米通商代表部も、今年1月15日にベトナムの為替政策を不当とする調査結果を発表した。

 ベトナムでは中央銀行の管理下で1日の変動幅を設ける管理変動相場制を採用するが、15年に始まった米国の利上げによりドル高ドン安が進み、20年には新型コロナウイルス禍で米国が再度利下げを行ったにもかかわらず、ドン安が維持されている。また、長期的にみた通貨の実力を表すPPP(購買力平価)レートと比べると実勢レートは3分の1にとどまり、ドンは長期的に割安に維持されてきた可能性がある。

 米国は民主党政権に代わったが、イエレン財務長官は為替を市場に委ねる方針を示しており、人為的なドン安などの是正を求める可能性がある。仮に米国が制裁に踏み切った場合、ベトナム経済への影響は大きい。米国はベトナムの総輸出の2割強を占める最大の輸出先であり、対米輸出品目には単価の高い機械類だけでなく繊維製品や履物、家具・玩具などの幅広い財が含まれ、こうした財の対米依存度は高い。

 米国でも小売業界など、産業界の一部から制裁の発動を懸念する声が出ている。米政府は制裁関税などの具体的な措置を一旦見送り、バイデン政権下で協議を続ける意向を示しているが、今後の交渉で制裁が課される可能性は残されている。(日本政策投資銀行経済調査室 菅野元希)(編集協力=日本政策投資銀行)

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus