海外情勢

北方領土観光にロシア人倍増 コロナ禍で志向変化、日本人ツアー中断

 ロシアが実効支配する北方領土が風光明媚(めいび)な観光地としてロシア人に人気だ。昨年は新型コロナウイルス禍で海外旅行が困難になり、前年比2倍超の観光客が訪問。開発が進んで通年で楽しめるようになったのが一因だ。共同経済活動をめぐる日本との交渉は難航しており、日本が関わらないまま独自発展を遂げ、一層の占有化が進む恐れがある。

 日露共同活動は停滞

 北方領土での日本とロシアの共同経済活動で事業化を目指す5分野の一つが観光だが、コロナ禍もあり交渉は停滞している。一方、ロシア人は国内に目を向け、有名ブロガーも現地情報を発信、関心が高まった。

 サハリンを拠点に北方領土ツアーを催行するビートモのイリナ・リ社長は「伝統的に観光は夏だ。冬の人気も高まり、ホテルは満室」と話す。夏に釣りや山歩きに訪れる人が多いが、冬も温泉や食、雪山歩きと楽しみ方は多様。北方領土旅行の取扱人数は2019年は18年の1.5倍、コロナ禍の20年もさらに増えた。ガイド資格を取る人も増えているという。

 北方領土を事実上管轄するサハリン州観光局のシェフチェンコ顧問は「20年のロシア全土からの観光客数は少なくとも19年の2倍」と指摘した。

 交通アクセスの向上も後押しする。19年には島間のヘリコプター定期便が就航、今年はサハリンと島を結ぶ航路に新造フェリー2隻が導入予定だ。サハリンと択捉、国後両島を結ぶ飛行機について、州民向けの片道5000ルーブル(約7150円)の割引価格を州外の人にも広げた。サハリン発着の3泊4日旅行は6万ルーブル程度から販売されている。

 択捉島拠点で水産業が主力の総合企業、ギドロストロイも、海沿いに高級ホテルや温泉施設を整備し観光業に注力している。コロナ禍で韓国や中国、欧州からの客は姿を消したが、ロシア人が急増。傘下の観光会社のシャトワ社長は「まさに観光ブーム。自社だけで昨年1000人以上を受け入れた。他社も含めると3倍以上だろう」と見積もる。

 富裕層向けに照準

 日本は19年秋、共同経済活動の試行事業で国後、択捉両島への初の観光ツアーを実施。だが、昨年はコロナ禍で、元島民らが旅券や査証(ビザ)なしで訪問する交流も含め全て中止された。

 択捉島のガイド、ザイツェフ氏は日本人観光客を見込んでロシア政府の土地無償貸与制度で旅館用地を確保したが「共同経済活動は進展がない」と計画を中断した。21年1月上旬の大型連休は11人のロシア人団体客を迎えて温泉や雪山、海辺を案内した。研修旅行も増え、「ロシア人増加はうれしい。富裕層向けツアーを充実させる」と話した。(ウラジオストク 共同)

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