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「値段が同じなのに食品が小さく」アベノミクスが招いた“通貨安インフレ”の怖さ (1/4ページ)

 アベノミクスは過去の遺物ではない、これから恐ろしい副作用が待っている。そう訴えるのは、弁護士の明石順平さん。想定以上のインフレに対応できなくするというのだ。「通貨安インフレ」というすぐそこにある危機にもかかわらず、「財政赤字は問題ない」と主張するのがMMT論者。彼らの間違いの大元にあるものとは--。

 ※本稿は、明石順平『キリギリスの年金 統計が示す私たちの現実』(朝日新書)の一部を再編集したものです。

 ピーク時には年80兆円の「異次元金融緩和」

 アベノミクスというのは、2012年末に発足した安倍政権が進める経済政策のことです。具体的には、(1)大胆な金融政策(2)機動的な財政政策(3)民間投資を喚起する成長戦略の「3本の矢」を柱としていますが、事実上は(1)の大胆な金融政策に尽きるといってよいです。最近では「アベノミクス」という言葉自体、あまり聞かなくなりました。

 大胆な金融政策というのは、日銀が民間銀行等から大量に国債を購入し、お金を大量供給することです。「異次元の金融緩和」と言われています。ピーク時において、年80兆円のペースでマネタリーベースが増加するよう買入れをしてきました。今はだいぶペースが落ちています。

 そもそも金利の上げ下げの手段が、日銀と銀行等の間で国債を売り買いすることでした。日銀が国債を買い取れば、銀行等が日銀に持っている日銀当座預金に代金が振り込まれ、残高が増えます。そうすると、お金の希少価値が下がり、銀行間で行われている貸し借りの金利が下がります。銀行間取引の金利が下がれば、銀行が民間に貸し出す際の金利も下がります。このように、「買いオペ」をやると、金利が下がっていきます。

 逆に、日銀が銀行等に国債を売れば(売りオペ)、日銀当座預金が減ります。そうなるとお金の希少価値が高まるので、銀行間の貸し借りの際の金利も上がり、銀行が民間に貸し出す際の金利も上がります。こうやって、買いオペ・売りオペで金利を上下させ、世の中に出回るお金の量を調節するのです。

 史上最大の買手が売手に転じたら

 では、現在の状態でインフレが予想以上に進行した際に、日銀がそれを抑え込むために「売りオペ」をやったら一体どうなるでしょう。日銀は直近2019年度ですら、発行額の約5割を買い占めてしまう史上最大の買手です。この買手が、急に売手に転じたら市場はどう反応するでしょう。間違いなく国債を売りに走ると思います。

 そうなれば国債は大暴落です。金利は急騰します。そんな危ない状態になったら、誰も円を持っていたくないでしょう。だから為替市場における急激な円売りも同時に起こります。そして、猛烈な円安インフレが、国民生活を地獄に叩き落とすでしょう。日銀に国債を直接引受させても円安インフレは止まりません。むしろ悪化するでしょう。直接引受は、政府が通貨を発行し放題になるのと同じ状態であり、そのような状態になれば、どんどん円が発行され、その価値が落ちていくことは目に見えているからです。投資家がそんな危ない通貨を持ち続けていたいと思うはずがないでしょう。したがって、売りオペはどう考えてもできません。というより、買うのを単に止めるだけでも、国債は暴落するでしょう。

 このように、想定以上のインフレが起きてそれを鎮圧しようとする際に、通常の手段である「売りオペ」ができないことが、アベノミクス最大の副作用と言ってよいのです。

 絶望下に登場した「MMT」という理論

 日銀が異次元の金融緩和を始める前の時点でも、国債の金利は大きく下がっていました。これは、有望な投資先がなく、さりとてお金を遊ばせておくわけにいかないので、「とりあえず国債を買っておこう。国債なら安全だろう」とみんなが同じことを考えて買った結果です。「周りが買うから自分も買う」状態であったと言えるでしょう。

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