国内

米で景気過熱予想が台頭 金融引き締め警戒、市場に潮目

 【ワシントン=塩原永久】バイデン米政権が1兆9千億ドル(約200兆円)規模の経済対策を実現させるのは、新型コロナウイルスの打撃を受けた景気の正常化を急ぐためだ。ただ、空前の財政出動による景気過熱を見越し、米長期金利が急伸している。金融緩和による超低金利に慣れ切った投資家は、金融引き締めに向けた潮目の変化が近づいたと警戒を強めている。

 バイデン氏は「米国救済プラン」と呼ぶ対策について「コロナ制圧に道を開くものだ」と説明してきた。コロナ禍では低所得層ほど失業率が高く、格差が広がった。巨額対策で高めの経済成長を生み出し、雇用市場への「傷痕を長引かせない」(イエレン財務長官)ようにする狙いもある。

 一方、財政出動の規模が過剰だとして、経済学者からは「予想インフレの急伸リスクがある」(サマーズ元米財務長官)、「経済をひどく過熱させかねない」(ブランチャード元国際通貨基金チーフエコノミスト)との懸念が出ている。

 米シカゴ大の調査では昨年春の現金給付1200ドルは給付から10日間で約3割が消費に回った。今回の1400ドルも消費拡大を力強く牽引(けんいん)しそうだ。ワクチンの普及も経済正常化を後押しし、米金融大手ゴールドマン・サックスは2021年末に失業率が4・1%に改善すると予想。コロナ禍前の水準に近づき、物価上昇圧力になるとみられる。

 日米欧の中央銀行による強力な金融緩和で、超低金利の市場環境が続いてきたが、米景気が急回復するとの観測を反映し、米10年債利回りが半年前の0・6%台から、1・5%台まで上昇(債券価格は下落)している。

 米金利上昇が進めば、巨額の「緩和マネー」の流れが急変しかねない。13年5月、米連邦準備制度理事会(FRB)首脳が量的金融緩和策の縮小を示唆して米長期金利が急上昇し、世界の金融市場が大混乱に陥った「テーパー・タントラム」(市場のかんしゃく)再来を警戒する見方もくすぶっている。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus