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日本から投資マネーが逃げていく…欧州発のメガトレンド「環境債」の怖さ (1/2ページ)

 世界的な債券安の中で人気を集める環境債

 欧州を中心に「環境債(グリーンボンド)」と呼ばれる金融商品を発行する流れが強まっている。環境債とは、環境対策ないしは環境改善に資するプロジェクトのための資金を調達する目的で発行される債券であり、2007年に欧州連合(EU)の開発銀行である欧州投資銀行(EIB)が発行した債券や翌2008年に世界銀行が発行した債券などを源流とするものだ。

 その後は政府系金融機関を中心に発行が増えたが、いわゆるSDGsの観点から環境対策の必要性が叫ばれるようになったことを受けて、企業や政府にもそうした流れが広がるようになった。投資家の人気も高く、3月初めにはイタリア政府が初の環境債を発行、85億ユーロ(約1.1兆円)の募集額に対して800億ユーロ以上の需要を集めた。

 投資家は環境債への投資を通じて、資金面から環境改善を支援することができる。つまり、機関投資家にとっては社会的責任(CSR)を果たすことにつながり、それがまた機関投資家の企業価値の向上をもたらす。そのため機関投資家は環境債の購入に積極的となっており、それがイタリアのケースで見られるような強い需要に現れている。

 年明け以降、世界の長期金利は米金利の上昇にけん引される形で上昇が続いている。つまり国債を中心に債券の需要は低迷しているわけだが、そうした軟調な相場環境にもかかわらず、イタリア政府が発行した環境債は強い需要を集めた。それだけ環境債は、投資側にとっても魅力度が極めて高い金融商品ということができるだろう。

 環境債市場の育成を図るEU

 EUは環境債に関する国際的なルール作りをリードしようとしている。EUの環境債基準(EU GBS)は、数ある国際的な環境債基準の中でも最も厳格なものと評価されている。そしてEUは、このルールにのっとった環境債の発行を加盟各国に奨励することで、この市場の育成と覇権の掌握を同時に達成しようと躍起になっている。

 EU自体もまた、新型コロナウイルスの感染拡大で傷ついた経済の復興を後押しするEU復興基金の財源の一部を、環境債の発行で賄おうとしている。具体的にEUは7500億ユーロ(約100兆円)の基金のうちの3割を環境債の発行で調達、当然、その分は加盟各国が実施する環境プロジェクトへの投資に充てられることになる。

 EUがこの分野に注力する理由は主に2つある。1つが、欧州の人々の環境意識の高さだ。今や各国で環境政党が台頭、無視しえない存在となっている。各国政府は有権者の政治的要請に呼応する必要があるし、EUもまた自らに対する人々の信頼を取り戻す必要がある。環境対策を推し進めるうえで環境債は有効なツールとなるわけだ。

 もう1つの理由は米中の存在だ。年明けに成立した米国のバイデン新政権は、パリ協定へ復帰するなど環境分野へのコミットメントを強めてきている。この分野に関する主導権を確立するとともに、中国に対する圧力のカードとして利用するためにも、EUは環境分野に注力する必要がある。環境債市場の育成は、その具体的な戦術となる。

 市場の拡大は見込めるが少なくない問題点

 国際NGOである気候債券イニシアチブ(CBI)によると、2020年に世界で発行された環境債は約2690億ドル(30兆円)に達した。2021年には4000億ドル規模になるとも予想される環境債市場だが、それでも債券市場の数%を占めるにすぎない。SDGsの流れは確固たるものであり、環境債市場そのものは着実な拡大が見込まれる。

 とはいえ、現状のスキームに問題点がないわけではない。確かに環境問題は重要であるが、政府はそれだけに注力するわけにはいかない。マネーに限りがある中で環境債に人気が集中すれば、その他の債券からマネーが逃げてしまうことになりかねない。民間に話を転じても、大手企業でも環境債を発行できる企業とできない企業に分かれてしまう。

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