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予算成立も日本経済待つ「2つの崖」 追加経済対策は計3回か

 令和3年度予算案が26日成立し、政府・与党は追加経済対策の検討を本格化する。新型コロナウイルスの感染「第4波」が懸念される中で各種支援策が期限を迎える6月末と、昨年計上した大規模経済対策の反動で景気が減速する年後半という「2つの崖」に手当てが必要なためだ。税収見通しの見直しに併せほぼ毎年編成している年末の補正予算を含め、最大3回の対策を編成する可能性がある。

 第1弾の経済対策は新年度早々に行われる見通し。失業手当の一部を国が補填(ほてん)する雇用調整助成金や、一時的に生活費が必要な人に最大20万円を貸し出す「緊急小口資金」などの特例措置が相次いで申請期限を迎える6月末が目安になる。

 支援策を再延長しない場合は、困窮世帯や中小企業への影響を抑えつつ通常時の制度に戻す経過措置が課題だ。地方自治体の対応が遅れているワクチン接種体制の強化や、国産ワクチンの開発支援もテーマになりそうだ。必要な財源は3年度予算の新型コロナ予備費5兆円から充てる見通し。

 計66兆8000億円の国費を積んだ2年度1、2次補正による巨額対策の執行が進み、今年後半に財政支出の縮小で景気が悪化する「財政の崖」も課題だ。秋までに実施される衆院解散・総選挙の前に景気浮揚で第2弾の対策が想定される。解散が夏前に早まった場合は第1弾が2弾と合体し、補正予算を含む大規模対策になる可能性もありそうだ。

 こうしたコロナ対策に、年末の予算編成前に税収見通し修正と併せ編成する第3弾の補正予算が加わる。3年度予算で想定した税収(57兆4000億円)は、緊急事態宣言解除後も飲食店の時短営業が続くことで下振れする恐れがあり、不足分は新規の国債発行で賄う見込み。来年夏の参院選を控え与党の歳出圧力は強まるとみられ、「2、3弾ともに10兆円規模の補正が求められる可能性がある」(SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミスト)。

 3年度はワクチンの普及によるコロナ禍の収束と、日本経済を安定的な成長軌道に戻すことが求められる重要な1年だ。デジタル化や脱炭素化といった成長戦略の予算は2年度3次補正である程度積んでおり、景気の下振れリスクとなる「2つの崖」を回避しながらコロナ後へ円滑に橋渡しする必要がある。断続的な感染拡大で依然弱含む景気を反転するため、追加経済対策が担う役割は大きい。(永田岳彦)

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