株価・外為

「コメ先物」本上場へ正念場 堂島商取がJAと交渉難航、迫る期限切れ

 国内で唯一コメ先物取引を扱う大阪堂島商品取引所は4月、ネット金融大手SBIホールディングスや外資系企業などから出資を受け、会員組織から株式会社に移行する。大阪・神戸での国際金融都市構想で中核を担うとの期待もあるが、堂島商取の「一丁目一番地」はコメ先物の本上場。コメの先物取引を認めていないJAグループの参画の可能性に注目が集まるが、堂島商取とJA側の交渉は難航しており、8月の試験上場の期限切れを前に正念場を迎えている。

 繰り返された延命

 「時間がない」

 昨年末に株式会社化が正式決定して以降、社長に就任予定の中塚一宏前金融担当相は自らの足で大阪市内を歩き回る。株式会社化を控え、企業や団体に出資を募るためだ。将来的にコメ以外の商品先物や金融分野などを取り扱う総合取引所化を目指すため、金融機関のほかにコメの流通業者やメーカー、エネルギー業界とも接触を重ねる。

 中塚氏は1月、全国農業協同組合中央会(JA全中)とも接触していることを明言。これまでJAグループが取引参加を拒んでいた経緯から「(主流だった天動説に反し地動説を唱えた)コペルニクス的には転回できないが、ちょっとずつでも氷を溶かしていきたい」と話した。堂島商取内でも中塚氏のトップセールスで雰囲気が変わることへの期待も高まっていた。

 しかし、2月に発表した出資者一覧では、SBIのほか、既存会員である商品先物業者、オランダを本拠地とする高速取引業者「オプティバー」などの参画が公表されたが、JAグループの名前はなかった。

 その後、中塚氏はJA全中以外にも同じJAグループの農林中央金庫などにもコンタクトを取ることを明かした上で、「『よし、やりましょう』となっていないのが現実」と述べ、交渉の難しさをにじませた。

 コメ先物取引の試験上場が始まったのは2011年。作況による価格変動のリスクを回避でき、生産者にとって収入の安定につながると期待された。ただ、国内流通の4割近くを握るJAグループは取引に参加せず、取引高は伸び悩んだ。農林水産省から本上場を認められることはなく、堂島商取は2年ごとの試験上場の延長を繰り返して延命してきた。

 JAグループは13年、「先物取引は反対であり、引き続き取引には参加せず、上場廃止に向けた運動を展開していく」とする談話を発表。主食であるコメを「投機的なマネーゲーム」である先物取引で扱うことは、コメの需給と価格安定を図ることに矛盾するとの理由で、現在までこの路線が維持されている。

 ただ、各地域ごとでは先物取引に参加する農協もある。ある農協関係者は「1年先の価格を見ることができ、販売先の一つとして活用できるメリットがある」と話す。もっとも、JAグループが反対している以上、表立って参加しているとは言いにくい状況だ。

 政官絡む3者結託

 なぜ、取引参加に反対するのか。農水省OBでキヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は「米価の維持は農協の行動原理だ」と指摘する。

 山下氏によれば、現物取引で米価を高く維持できれば売上高は増え、JAは販売手数料を確保できる。このためJAを介さずに価格形成される先物取引に反対し、現物での米価維持にこだわっているとする。

 また、本上場が認められない背景には、JA側と、そこを支持基盤とする自民党の農林族、農水省による3者が結託した「農政トライアングル」の存在があり、「本上場は容易ではない」とみる。

 一方、コメ先物の取引量は増えつつある。試験上場の期限である2年ごとの取引高は本上場認可の基準とされるが、19年8月からの今期は1月までが1日当たり1769枚。過去最高だった15~17年の1548枚を上回る水準だ。

 特に20年8月から取引高は急増。背景には商品先物業界を中心としたニーズがあるほか、中塚氏が顧問を務めるSBIの北尾吉孝社長が積極的に関与する姿勢を示したことで期待が高まったとされる。

 中塚氏は「だんだんと(本上場の)土台に乗っかっていけるようになった」と自信を見せる。野上浩太郎農水相も今年2月の記者会見で、本上場の可否こそコメントを避けたが、「昨年8月までの1年間は活発な取引が行われているとは言い難い状況にあったが、ここ半年は取引量が上向きつつある」と一定の評価を示した。

 SBIが主導する大阪、神戸での国際金融都市構想でも拠点の一つとなるだけに、関西財界も堂島商取に話を聞くなどし、本上場が実現するか注視する。

 2年前に4度目の試験上場延長が認められた際、自民党は「際限なく延長を認めることは試験上場制度の趣旨に沿わない」と農水省に申し入れた。これ以上の延長は認めない-とくぎを刺した形だ。本上場が認可されなければ市場の存続自体が危ぶまれる状況で、堂島商取は今夏、岐路を迎える。(岡本祐大)

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