【ロンドンの甃】英ロンドン南部で今月上旬、帰宅途中の女性(33)が警官の男に連れ去られ、殺害されるという痛ましい事件が起こった。現職警官が誘拐・殺人の容疑で逮捕・訴追されたことを受け国中に衝撃が広がった。
多くの国民を恐怖に陥れたのは、街灯が設置され、歩行者の多い道を女性が歩いている最中に事件に巻き込まれたことだ。
英BBC放送によると、2019年3月からの1年間で、英国では200人を超える女性が殺害された。最近でも、女性が1人で歩いているときに暴力を振るわれたり、性的な嫌がらせを受けたりする事案が相次いでいるようだ。今回の事件を受け、英国各地の女性が交流サイト(SNS)で外出中に受けた被害を告白し、「事件を風化させてはいけない」と声を上げた。
先週の日曜日、事件現場付近の公園を訪れると、女性を追悼するために花を手向ける市民の姿があった。「英国で(新型コロナウイルスの感染を抑制する)外出制限が緩和され始めたのに、女性が安心して1人で歩けないなんて…」。公園を訪れた20代の女性は悔しそうにつぶやいた。
英国はロックダウン(都市封鎖)の段階的な緩和を3月8日から始めた。国民の生活を正常に戻す目標を掲げるジョンソン政権に、治安問題が立ちはだかっている。(板東和正)