国内

好調な自動車も…先行き悲観 半導体不足など懸念

 1日に日本銀行が公表した3月の企業短期経済観測調査(短観)では、製造業を中心に、日本企業の景況感の改善が確認された。一方、3カ月後の先行きに対しては、自動車など好調な業種でも慎重な姿勢がみられた。最大の懸念材料は世界的な半導体の不足だ。国内でも、ルネサスエレクトロニクスの那珂工場(茨城県ひたちなか市)で起きた火災で、すでに不足していた供給体制への制約がさらに強まった。経済回復をリードする自動車の減産の影響が、幅広い産業に波及する恐れが出ている。

 先行きの景況感について、自動車は4ポイント悪化を見込む。背景にあるのが昨年来続く半導体不足だ。今年2月には福島県沖地震、3月にはルネサスの工場火災と悪材料が重なり、自動車の減産の長期化は避けられない情勢だ。

 野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストの試算によると、この火災の影響により、4~6月期の国内総生産(GDP)成長率は年率換算で11・0~14・9%低下が見込まれる。7~9月期に影響がずれ込む可能性もあり、木内氏は「今回の火災事故はコロナショックからの日本経済の回復を大きく阻むことになる」と指摘する。

 新型コロナウイルス感染症の収束も先がみえず、一部業種は今後の見通しに自信を持てずにいる状況だ。3月短観では「需要の先行きが不透明」(石油製品)のほか、「巣ごもり需要の一巡が心配」(食料品)といった声が聞かれた。

 半導体以外にも素材の需給は引き締まっており、販売価格に対して、仕入れ価格の上昇ペースが速いことにも注意が必要だ。足元の円安や原油高傾向が続けば、原材料コストが上昇し、収益圧迫要因となることが懸念される。(米沢文)

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