海外情勢

米中牽引、世界経済の回復に弾み 緊急事態宣言1年

 新型コロナウイルス危機で大打撃を受けた世界経済は、米国と中国の両大国を牽引(けんいん)役に回復基調を強めている。両国と経済関係が深い日本への恩恵も大きい。一方、中国は強権的な感染対策により早期の経済再開を実現。感染抑止で出遅れた米国に対抗する自信を深めた。経済規模で中国が米国を上回る時期が早まったとの見方もあり、コロナ禍が米中「経済力」競争に及ぼした影響に関心が高まっている。(ワシントン 塩原永久、北京 三塚聖平)

 国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事は3月30日の講演で、「米国と中国の2つのエンジンで回復が高まった」と指摘。世界成長率の見通しを近く上方修正すると表明した。

 特に中国は感染症の早期封じ込めに成功し、2021年の中国の実質国内総生産(GDP)はプラス8%超を見込むと話した。

 コロナ対応の初動が批判された中国だが、移動制限など民主主義国家では難しい強力な感染対策で流行を押さえ込んだ。それにより景気の立ち直りは早く、20年の実質GDPは前年比2・3%増と主要国で唯一のプラス成長を遂げた。

 一方、トランプ米前政権の対応は足並みが乱れ、感染再拡大を招いて20年はマイナス成長だった。ただ、急速なワクチン普及とバイデン政権が3月上旬に成立させた約1兆9000億ドル(約210兆円)の経済対策で回復を強め、21年はプラス6%を上回る見通しだ。

 もっとも、米中の経済覇権争いでコロナ禍が「中国優位」に働いたとの見方は広がった。複数の調査機関が昨年末から今年初め、米景気がもたつき「中国GDPが米国を上回る時期が早まった」との予測を相次ぎ発表。早ければ26年に中国が「世界最大の経済大国」になるとの展望を示した。

 出遅れた米国を尻目に、中国の李克強首相は3月5日、「感染症対策の取り組みで重要な戦略的成果をあげた」と社会主義制度の優位性を強調。中国は世界に先駆け回復が進んだ経済力を、感染症流行で経済低迷に苦しむ途上国などとの関係強化の武器としている。

 ただ、大規模な財政出動を実現したバイデン米大統領は3月25日、「もっとも裕福で最強の国」になるとの中国の目標は「実現しない。米国は成長し続けるからだ」と断言。巨額対策の成立で中長期的なGDP成長率が高まり、「中国の米国超えは遠のいた」とみるエコノミストも出ている。

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