海外情勢

「デジタル通貨」に米銀恐々 高収益の決済仲介失う恐れ、先延ばし求め陳情

 世界の中央銀行がデジタル通貨の発行に向けた取り組みを進める中、米連邦準備制度理事会(FRB)が「デジタルドル」または「フェドコイン」と呼ばれるデジタル通貨を導入すれば、米金融サービス業界に数年来で最大の混乱をもたらす可能性がある。中銀発行のデジタル通貨(CBDC)が金融機関を収益性の高い米決済システムの仲介者としての役割から切り離す可能性がある点に銀行関係者は戦々恐々としている。このため、FRBや議会にデジタル通貨創設を遅らせるよう働きかけたり、自分たちが蚊帳の外に置かれないよう陳情したりする動きがみられる。

 7月にも研究発表

 米国銀行協会(ABA)の決済担当シニアバイスプレジデント、スティーブ・ケニーリー氏は「こうした大きな影響が生じる可能性のある物事を急ぐと、経済的包摂への取り組みにおいて意義ある貢献もなく、銀行システムの安定性を脅かす意図せぬ結果を招く恐れがある」と牽制(けんせい)。ABAはこの問題で議会に働きかけているとし、昨年の書面による証言ではデジタルドルを存在しない問題を探し求めて高くつく解決策と呼んだ。

 デジタル通貨の登場で米国民がカードを利用しなくなったり、手数料を払わずに容易に取引できるようになったりすれば、ビザやマスターカードなどクレジットカード会社の利益の一部はリスクにさらされる。それでも両社の広報担当は、こうしたカード会社が自社ネットワーク上でデジタル通貨を使用できるように、各国・地域の中銀と連携していると説明する。マスターカードは2月にバハマ中銀が発行するデジタル通貨「サンドドル」に対応したプリペイドカードを発表した。

 米国ではボストン連邦準備銀行とマサチューセッツ工科大学(MIT)によるデジタルドルの研究が、早ければ7月にも発表される予定だ。ボストン連銀でプロジェクトを率いるジェームス・クーニャ氏は、デジタルドルによる取引の移動、保存、決済が可能なソフトウエアプラットフォームの試作品を少なくとも2つは披露したいと話す。

 もっとも、米国の議員や財務省当局者、FRBはまだ、デジタル通貨の導入を承認しておらず、実現は数年先になる可能性がある。また、デジタルドルが既存の国際決済ネットワークでどのようにやり取りされるかも決まっていない。それでも、米国および他の国々は自国通貨のデジタル化に十分傾倒しているようにみえ、金融業界の幹部らを神経質にさせている。

 イエレン氏が関心

 イエレン財務長官は2月、低所得世帯も金融サービスの恩恵を受けられる「金融包摂」面から、デジタルドルの実現可能性に関する研究支援に関心を示した。

 一方、パウエルFRB議長は3月22日の国際決済銀行(BIS)主催のイベントで、「われわれにはデジタルドルの技術的課題、想定され得る負担や利益を理解する上で最先端を行く責務がある」と述べた上で、「この計画を急ぐ必要はない」と言明した。また、議会のサポート、理想的には法制化という形がないままFRBが進めることはないとの見解を示した。

 とはいえ、米シンクタンク大西洋評議会のジオエコノミクスセンターのディレクター、ジョン・リプスキー氏は通貨のデジタル化について、「火が付いた状態だ。世界でこの手のプロジェクトは猛スピードで動いている」と指摘。上院銀行委員会のシェロッド・ブラウン新委員長(オハイオ州、民主)は3月初めにパウエルFRB議長に送った書簡で、デジタル通貨研究のスピードアップを促し、「われわれは取り残されるわけにはいかない」と主張した。

 米仮想通貨の業界団体、コインセンターを率いるジェリー・ブリトー氏は、フェドコイン導入で米国民がデジタル通貨の購入に順応する可能性があるとする一方、政府の指示次第では、そのような通貨が国民の支出追跡に利用される恐れがあり、デジタル通貨に約束されていた部分的な匿名性が損なわれ得ると警戒している。(ブルームバーグ Joe Light)

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