論風

高レベル放射性廃棄物、最終処分場の候補地選び本格化 自治体誘致の流れ大切に

 昨年10月、北海道の2つの自治体(寿都町(すっつちょう)、神恵内村(かもえないむら))が歴史的な意思表明をした。原子力発電に由来する高レベル放射性廃棄物(いわゆる「核のゴミ」)の最終処分場の建設に向けた政府の調査を受け入れた。翌11月、経済産業省・原子力発電環境整備機構(NUMO)が、その第1段階の文献調査を開始した。(社会保障経済研究所代表・石川和男)

 俗にいう「脱原発」「反原発」「原発即刻ゼロ化」などの主張の理由の一つに“核のゴミの行き場がない”という説がある。原発ゴミを棄てる場所(最終処分場)がないのだから、今すぐ全ての原発を廃止すべきだ-。こうした論調が、いわゆる“トイレなきマンション”説となっているようだ。

 有用なエネルギー資源

 原子力発電に使用されるのは核燃料(ウラン)だが、発電により使用されるのは全体の3~5%だけで、残りの95~97%は再利用できる核燃料(ウラン、プルトニウム)を含んだもの。この使用済み燃料を再処理してウランとプルトニウムの混合酸化物(MOX)燃料に加工し、これを再び原発で使用する。これが核燃料サイクルだ。

 このMOX燃料は有用な国産資源である。現在、国内に1万7000トンある使用済み燃料の全量を再処理すると、原油換算で15兆~23兆円分(1バレル=7200~1万1000円)、日本国内の原子力発電量の5年分、総発電電力量の1.5年分に相当する。

 再処理の過程で発生するウランとプルトニウム採取後の液状の廃棄物が高レベル放射性廃棄物。日本では、ガラスと混ぜて固化処理することになっている。寿都町と神恵内村は同じ時期に意思を表明したが、両自治体とも以前から入念に勉強・検討してきた。今もまだ日本では、原子力に関する前向きな声が挙げにくい雰囲気が続いている。そうした中でこうした前向きな話が出てきたことで、原子力に係る理解が再び深まることが期待される。

 脱炭素政策の目標「2050年までのカーボンニュートラルの実現」を掲げる政府としても、この両自治体の英断を大事にし、次につなげていかなければならない。実際には、最終処分場の誘致に向けて水面下での検討を重ねている自治体は他にもある。今般、寿都町と神恵内村が動き始めたことで、これに続く自治体も出てくるだろう。誘致合戦の第1幕が上がったともいえる。

 国は拠点作りの提案を

 原子力発電により発生する放射性廃棄物は、原則として自国内で処理・処分することが国際的な約束事。高レベル放射性廃棄物には地層処分が最も妥当という見解で国際的に一致している。高レベル放射性廃棄物のガラス固化体は、埋設できるようになるまで30~50年の冷却期間が必要だ。日本で最終処分場が必要になるのは当分先の話だが、施設の建設までには相当の時間を要する。今から準備して早過ぎるということはない。

 文献調査は約2年間の予定だが、現地で実際に調査するわけではない。この期間は調査そのもの以上に、地元と国、NUMOとの対話を密にし、意思疎通を円滑にしていくことが肝要となる。賛成・反対で住民が分断され、後々まで傷痕が残るようなことがないよう、国が前面に出て対話を重ねていく必要がある。

 文献調査が始まれば、現地には海外からの視察が多く訪れるだろう。概要調査に進めば、測量や工事などで国内からの人の出入りも増える。さらにその先の段階では、現地が産業や研究の拠点になっていく可能性が高い。国や電力業界は、そうなるように多くの提案を行っていくべきだ。

 最終処分場は単なるゴミ捨て場などではない。それは最先端の科学技術の集大成である。安全確実でクリーンな地層処分を可能にするため、どれだけ高度な科学技術が活用されているか。将来世代をはじめとした地元の皆さんに、今後それを知っていただけば大きな誇りを持てるようになるはずだ。

【プロフィル】石川和男 いしかわ・かずお 東大工卒、1989年通商産業省(現経済産業省)入省。各般の経済政策、エネルギー政策、産業政策、消費者政策に携わり、2007年退官。11年9月から現職。他に算数脳育研究会代表理事など。福岡県生まれ。

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