国内

練習所がワクチン会場に転用…全国で広がる「五輪合宿辞退ドミノ」の実態 (2/2ページ)

 14日間の自主隔離が免除されているが…

 本来、外国から日本に到着した旅客は、基本的に「14日間の自主隔離」が求められる。しかし、オリパラ本大会に参加する関係者らは「特例」として、隔離を免除される可能性もある。現状では最終結論が出ていないが、事前合宿実施を予定するチーム関係者も同様に隔離免除となる可能性が高い。

 合宿先の自治体は、合宿と関係のない一般市民らとの接触一切を隔絶するよう工夫を行うことが国から求められている。しかし、五輪代表選手とはいえ、こうした「コロナにかかっている可能性がある外国人がわが街にやってくる」という状況を一般市民が許容し得るのだろうか。

 心配なのは、選手と一緒に活動する自治体関係者をはじめ、ホテルや練習会場のスタッフらへの感染だ。計画によると、こうした「チームに関わる人々」には数日おきにPCR検査を行い万全を期すという。しかし、自治体職員らが合宿中に選手らと関わる一方で自宅や職場などにも出入りしているうちに、いつしかウイルスを一般市民の空間に持ち込んでしまったらどうなるのだろう。想像するだに恐ろしい。

 議論は中断、でも登録は増え続けている

 一方、事前合宿がない格好でのオリパラ関連交流プログラムも存在する。これは「ホストタウン事業」と呼ばれるものだ。旗振りを行う内閣官房によると、「スポーツ立国、グローバル化の推進、地域の活性化、観光振興等に資する観点から、参加国・地域との人的・経済的・文化的な相互交流を図る地方公共団体をホストタウンとして登録する」といった定義がなされている。

 政府と組織委員会、東京都は、出入国管理や検査医療体制、会場運営等を総合的に検討・調整する場である「新型コロナウイルス感染症対策調整会議」を定期的に開いている。2020年12月までに計6回が実施された。

 ところが、年初の緊急事態宣言発令以降、外国人の入国がほぼ不可能になったこともあり、オリパラ関連の選手受け入れに関する論議が中断。前述の「アスリートトラック」の運用も停止されており、調整会議は今年に入ってから一度も実施されていない。

 ちなみに、「ホストタウン」への登録申請が内閣官房により承認され、一定の交流行事を実施すると、かかった費用のおよそ半額が国から追って交付される仕組みとなっている。3月30日時点で、登録する自治体数は525に達しているほか、受け入れる相手国・地域数も184(IOC加盟の国・地域は206)となっている。昨年春にオリパラの延期が決まった後もホストタウンに登録する自治体は増え続けている。

 「合宿中止」がドミノ倒しのように増える

 選手らを地元自治体まで呼び込むには厳しいコロナ対策が求められるため、ホストタウン事業については、極端に縮小した形でも実施したと認められそうだ。

 政府は4月6日、ホストタウン事業について、オンラインを活用した間接的な交流促進を求める方針を決めた。言い換えると、各自治体に招いて選手らとの直接面会が叶わなくても「交流した」と見なすこととなった。

 これについて政府関係者は、「ホストタウン交流における『事前合宿』は活動の一部であり、必須要件ではない」とした上で、「継続した交流を行う自治体を引き続き応援していきたい」との考えを示している。

 選手が来なくてもホストタウンとして認められ、かつ交付金も支給されるなら、全国の自治体の間で事前合宿中止の流れがドミノ倒しのように増えてきそうだ。

 いったい誰が責任を取るのか

 では、「事前合宿ができないなら、五輪を辞退する」という選手は出てくるだろうか。

 先に述べた通り、事前合宿の主な目的は「時差ボケの解消と最終調整」だ。強豪国はいずれも4~5年前から日本側の競技関係者や施設管理者と接触し、自国選手により適した合宿用施設の確保にしのぎを削ってきた。

 それが日本での滞在が選手村での5日間のみに抑えられてしまったら、選手によっては「コンディションを整えるのが難しい」と考えて、出場を断念する可能性さえある。

 また仮に、合宿をせずに五輪に臨むチームがいたとしても、行き場所がなくなる選手らを救済する方針はどこからも示されていない。「たかが自治体の行事だから無くなったところで影響なんて微々たるものだろう」などと考えているのであれば、あまりに無責任だろう。

 東京五輪は「開幕100日前」までなんとか引っ張ってきた。しかし、選手らにとって本来のパフォーマンスが出せない状況が膨らんでいくのは致命的だ。合宿中止によって出場を断念するチームや選手が続発したら、いったい誰がどう責任を取るのだろうか。

 

 さかい もとみ(さかい・もとみ)

 ジャーナリスト

 1965年名古屋生まれ。日大国際関係学部卒。香港で15年余り暮らしたのち、2008年8月からロンドン在住、日本人の妻と2人暮らし。在英ジャーナリストとして、日本国内の媒体向けに記事を執筆。旅行業にも従事し、英国訪問の日本人らのアテンド役も担う。■Facebook ■Twitter

 

 (ジャーナリスト さかい もとみ)(PRESIDENT Online)

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