新型コロナウイルスの感染拡大に伴い医療体制の逼迫(ひっぱく)が深刻化している大阪府で、入院調整を担う幹部職員の医療監が高齢者について「入院の優先順位を下げざるを得ない」とするメールを19日に府内の全18保健所に送信していたことが30日、府への取材でわかった。医療監は同日、記者団に「不適切な表現があった。非常に反省している」とコメント。府健康医療部は「府の方針とは全く異なる」として、29日に医療監を口頭で注意し、各保健所に撤回する旨、連絡した。
府によると、医療監は医師資格を持つ医療系技術職のトップで、「入院調整依頼に関するお願い」と題するメールを19日夜に各保健所長に送った。
文面には「当面の方針として、少ない病床を有効に利用するためにも年齢が高い方については入院の優先順位を下げざるを得ない」と記載。心停止などの際に蘇生(そせい)措置拒否(DNAR)の意思を示す高齢者施設の入所者については「看取りも含めて対応をご検討いただきたい」とした。
府は65歳以上の感染者について、無症状や軽症でなければ原則入院とし、蘇生措置拒否の意思を示す患者も病床に余裕がある場合は入院措置を取っている。
府内では13日以降、入院中の重症者が確保病床を上回る状況が続き、一部の重症者は軽症・中等症病床で治療を受けている。19日の病床使用率は重症向けが97・6%、軽症・中等症向けが79・1%だった。
藤井睦子健康医療部長は30日、取材に「府の方針と全く異なり、高齢を理由に入院の優先順位を下げることは一切ない。高齢者施設での対応力を上げてもらいたいという趣旨だった」と釈明。「誤解を招く表現が含まれており、おわびしたい」と述べた。