海外情勢

カンボジアでクラスター感染深刻、首都中心に広がる工場休業 都市封鎖で打撃

 新型コロナウイルスの感染拡大が続くカンボジアで、ロックダウン(都市封鎖)による経済活動への影響が深刻になっている。4月末現在、首都プノンペンおよび隣接するカンダル州タクマウ市、プレアシアヌーク州のシアヌークビル市、バンテイミエンチェイ州のポイペト市などが封鎖されている。期間はそれぞれ5月上旬までだが、どの地域でも感染拡大が収束する見通しはまだない。

 労働者の陽性増加

 カンボジア労働職業訓練省は4月28日に記者会見を開き、新型コロナ感染による国内の工場への影響を発表した。それによると、同日現在、全国で206カ所の工場が一時休業となっており、これまでに工場ワーカー1673人が新型コロナ陽性と診断された。また、濃厚接触者などとして合計で1万7000人以上が隔離措置になっている。206工場のうち、最も多い134工場がプノンペン、続いて23工場がカンダル州、26工場がタケオ州、16工場がシアヌークビルなどとなっている。また、感染者1673人のうち1600人がプノンペンの居住者だ。

 カンボジア国内では、2月20日、プノンペンを中心に市中感染が確認された。それまで感染はほぼ全てが国外からの持ち込みだったが、これをきっかけに市中感染が広がり、4月28日現在、感染者数の累計は1万1761人、このうち市中感染による陽性者は1万人を超えている。カンボジアでは3月11日まで死者がいなかったが、市中感染の拡大により現在は90人近くにまで増えた。

 感染は特にプノンペンで広がっており、縫製工場や市場でのクラスター感染が深刻になった。そこで政府は4月15日にプノンペン都と、同じ生活・経済圏にあるカンダル州タクマウ市のロックダウンを決定。当初は同28日までだったが、5月5日までその期間は延長された。また、プノンペン都やカンダル州では感染の危険性があるとして全ての市場が閉鎖され、政府の指導のもとで臨時市場やバスなどを利用した移動市場が運営されている。それでも食材の調達に困難が生じ、臨時休業する食堂が相次ぐ。

 一方、政府やプノンペン都は4月29日以降、都内とタクマウ市を感染が深刻なレッドゾーン、中程度の危険性のオレンジゾーン、危険性が低いイエローゾーンに分け、段階的に行動制限を緩めることにした。しかし、レッドゾーンやオレンジゾーンは原則、家からの外出が禁止され、生活に不可欠な企業活動が禁止されている。違う色のゾーンを越える移動は禁止されるなど、移動・活動は変わらず厳しく制限されている。

 経済回復は不透明

 こうした状況の中、政府は、貧困家庭に対し食料の配布をするなど支援活動をしている。また、カンボジア労働職業訓練省は同28日の記者会見の中で雇用者に対し、休業中の工場のワーカーに4月は給与の半額を支給するように求めた。また、感染拡大の危険性が低いイエローゾーンに位置する約60工場はできるだけ速やかに操業再開するように求めた。

 ただ、プノンペン都の新規感染者数は減少傾向になく、多い時には1日600人を超えた。同29日からイエローゾーンが設けられたことで一部の活動は解禁となったが、住民たちにはいらだちが募る。ワクチン接種も同時に進められているが、その効果が見えるにはまだ時間がかかりそうだ。

 国際通貨基金(IMF)は4月上旬、世界経済見通し2021年4月版を発表し、その中でカンボジアの経済成長率について、20年はマイナス3.5%、21年にはプラス4.2%にまで回復するものとみている。

 しかし2月に発生した市中感染が今も収束のめどが立たず、さらに医療崩壊も起きつつあるとみられている。感染者数が病床数を超え、プノンペン都内の大型会議場や結婚式場、ホテルなどが仮設病院となっていることや、保健省が、民間医療機関での新型コロナ患者の受け入れを許可したことなどからも、本来の医療キャパシティを超えた状況であることは明らかだ。

 さらにロックダウンが予定よりも長引くという予測や、感染拡大が全国に及んでいることも考慮すると、21年にカンボジア経済がどこまで回復するかは不透明だ。(カンボジア情報「プノンネット」編集長 木村文)

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