ジャカルタレター

テロ犯は本当に「イスラム」か

 新型コロナウイルスでまだまだ混乱が続くインドネシアで3月末、テロ事件が2つ起きた。1つ目は28日、南スラウェシ州の州都マカッサル市の教会付近での爆弾事件だ。バイクに2人乗りした男女による犯行で、彼らは自爆、付近にいた信者ら20人が負傷した。

 自爆した2人は結婚したばかりの20代で、イラクとシリアのイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国(IS)」系のイスラム組織「ジャマー・アンシャルッド・ダウラ(JAD)」の末端メンバー。2018年5月に起きたインドネシア・スラバヤでの自爆テロ、19年1月に起きたフィリピン南部スールー州ホロ島での自爆テロなども、JADの末端メンバーによる犯行だ。さらには19年10月、当時、政治・法務・治安調整相だったウィラント氏を刃物で襲ったのもJADの関係者である。

 今年3月の2つ目は31日、ジャカルタの警察本部に25歳の女性が侵入、発砲した事件だ。彼女は、けが人が出る前に撃たれて亡くなったが、ISに傾倒していた単独犯であり、マカッサルの事件に触発されたのではないかと報道されている。

 JADは、説教師のアマン・アブドゥルラフマン氏が14年、獄中で結成した組織であり、ISへの参加もしくはインドネシア国内でのテロを呼び掛けていた。JADの組織そのものは非合法組織に指定され、治安当局による摘発が続き弱体化しており、組織からの具体的な指示があるわけではない。それぞれの末端の小さなグループが、今回はカップル、18年のスラバヤのテロは、妻や子供も含む家族単位で犯行に及んでいるため、取り締まりが非常に難しい。

 女性自ら聖戦戦士

 最近のテロ行為の特徴としてさまざまな専門家が指摘しているのが、女性の役割の変化である。今までは、妻として夫を支える存在であり、時に夫のテロ行為をやめさせる役割も担えるのではないかとさえ言われていた。しかし女性たちも、自らが「ジハード(聖戦)戦士」として自爆テロに関わるケースが増えてきているという点である。

 また、テロ実行犯の年齢は20代が多いということも特徴であろう。その多くがインターネットによって感化され、今回のような「ローンウルフ」と言われる単独によるテロ行為も見られる。こうなってくると、事前の摘発はほぼ不可能である。

 若いテロ実行犯は皆、ムスリムであり、JADという組織もイスラムを標榜(ひょうぼう)している団体である。しかし、彼らはそもそもイスラムを深く理解していたのだろうか。彼らがムスリムだったからイスラムという宗教から、それも非常に偏った見方から、個々人の心の問題の答えを求めただけで、これらのテロ行為は、もしかすると日本でも発生した無差別殺人事件と変わりないのではないか。

 加害者心理で対策を

 コロナ禍で今まで以上にストレスを感じ、家庭内暴力(DV)も含めあらゆる形の暴力をふるってしまう加害者側の心の動きを知ることで、これらテロに対しても何らかの対策ができないのだろうか。4月13日から始まった「ラマダン(断食月)」に改めてイスラムという宗教への理解を深めるとともに、加害者の心理も知りたいと思う。(笹川平和財団 堀場明子)

 「ASEAN経済通信」 https://www.asean-economy.com/

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus