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「大手電力も新電力も総崩れ」電力不安を抱える日本から、工場がなくなる日 (2/2ページ)

 ■年末年始の電力逼迫で、「ペナルティー料金」が高騰

 新電力最古参のFパワーは顧客のライフスタイルに応じたさまざまなプランを用意し、積極的な営業戦略で年間売上高は瞬く間に1000億円超と急成長した。18年4月には新電力の電力販売量でも全国トップに上り詰めた。売上高のピークは19年6月期で、1606億円に達した。

 しかし、利益面では苦戦が続いた。発電所を持たない新電力会社は大手電力などと契約した発電所や、日本卸電力取引所(JEPX)から電力を調達しなければならない。自由化で料金競争が激しくなるなか、いかに安く外部から安く電力を調達できるかが新電力の生き残りのカギを握る。

 こうした状況の中でFパワーの息の根を止めたのは年末年始の電力逼迫(ひっぱく)だ。全国的な寒波で電力需要が急増、大手電力でさえも策を打たなければ停電の危機が迫る中、JEPXへ供給される電力が底をついた。この結果、取引価格が通常の10~20倍に高騰する中、Fパワーも市場から高い電力を買わざるを得なかった。

 新電力各社は顧客への安定供給を果たすため、需要が供給を上回った際に不足する電力を大手電力に穴埋めしてもらう契約を結ぶ。その際、後日、不足した電力を肩代わりしてもらった分を「ペナルティー」として支払わなければならない。この「インバランス料金」がFパワーの経営を直撃した。

 ■新電力4社に1社が救済措置を申し入れる異常な事態

 Fパワーの場合、1月分のインバランス料金は197億円。銀行借り入れは2020年6月期で長短合わせて約137億円にすぎない。このインバランス料金が支払えなくなったため、破綻に追い込まれたのだ。

 経産省は1月以降、所定の条件をクリアした新電力にはインバランス料金などの分割払い(最大9カ月)を認めたり、政府系金融機関への支援要請などの資金繰り支援策を追加したりして対応に躍起だ。分割払いの猶予措置を受けた新電力は4月時点で約180社。登録事業者716社中、およそ4社に1社が救済措置を申し入れる異常な事態となっている。

 大手電力はカルテルで電気料金の下げ止まりを画策し、大手電力を切り崩す期待を背負う新電力は経営破綻の予備軍であふれる――。これが電力自由化から5年がたった日本の現状だ。新電力が苦境に立つのも、この年末年始の電力逼迫時に大手電力がJEPXに「売り惜しみ」をしたため、電力価格が高騰したためではないかという疑念がある。

 ■大手電力が蛇口を閉めれば、新電力はすぐに干上がる

 大手電力の立場に立てば、自社管内で停電間際の状態にあるのに、侵食してくるライバルの新電力に与える電力は「ない」ということだろう。取引市場に供給する電力の8割を占める大手電力が蛇口を閉めれば、発電所を持たない新電力はすぐに干上がってしまう。

 菅政権は先に米バイデン大統領の呼びかけで開催された地球温暖化を巡る国際会議で30年までに13年比で46%まで温暖化ガスの排出量削減を目指すことを表明した。これまでの26%からの大幅な引き上げだ。

 しかし、日本の電力業界の現状に目を向ければ、お寒い限りだ。大手電力が期待を寄せる原子力発電所は東電による相次ぐ不祥事や、使用済み核燃料の処理を巡って、いまだ結論が出ない状態にある。再稼働のめどが立たない原発も多い。

 ■製造業など大口の需要家の「海外逃避」を招くことに

 再生エネにしても太陽光パネルを敷設する平地は少なく、期待を寄せる洋上風力は安定して風が吹く海域が少ない。欧州ではすでに再エネのほうが化石燃料を使った石炭やガス火力発電より安くなっているが、日本では欧州並みに再エネ価格を下げることは難しい。

 今までは安定的に電力を供給することが電力事業会社の唯一のミッションだったが、ESGが声高に叫ばれる現在は、電気の「質」や「由来」も問われている。要は再生エネを使った「クリーン」な電力かどうかが電力各社に求められているのだ。

 再エネに充てる原資を確保しなければならないこの時期に、大手、新電力とも総崩れの事態に、国はどう対応するのか。5年たった電力自由化の検証をせずに脱炭素化を進めれば、「良質」で「安価」な電力供給はおぼつかない。それは後々、日本から、製造業など大口の需要家の「海外逃避」を招くことになる。

 (プレジデントオンライン編集部)(PRESIDENT Online)

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