財務省が１３日発表した２０２０年度の国際収支（速報）では、新型コロナウイルス感染拡大に伴い訪日旅行客の需要が蒸発した影響で、訪日客消費から日本人が海外で使ったお金を差し引いた「旅行収支」の黒字が前年度比８９．２％減の２６４５億円と大幅な落ち込みをみせた。減少幅は統計上比較可能な１９９６年度以降で最大。ただ、海外とのモノやサービスなどの取引状況を示す「経常収支」は企業の海外投資や貿易が下支えして黒字を確保した。
コロナ禍の長期化で、訪日客（インバウンド）の消費は８８％減、海外を旅行した日本人（アウトバウンド）の消費も７６．６％減だった。旅行収支は訪日客の急増で２０１４年度に黒字に転じて以降、５年連続で黒字幅が拡大していたが、一転して大幅減となった。
一方、経常収支の黒字は３．８％減の１８兆２０３８億円で、コロナ禍の景気崩落に見舞われた２０年度も３６年連続の黒字を確保した。
海外投資で得た利子や配当金の動向を表す「第１次所得収支」の黒字は４．０％減の２０兆７７９７億円。大幅な黒字を維持したが、年度前半の世界的低金利で企業や個人が投資した海外債券の利子受取額が減少した影響で黒字幅は減った。
輸出から輸入を差し引いた「貿易収支」の黒字は前年度比約８．１倍の３兆９０４７億円。コロナ禍で米国向けの自動車や自動車部品などの輸出が減少したものの、原油や液化天然ガス（ＬＮＧ）といった輸入に頼るエネルギー価格も世界的な需要減退で下落し、輸入減が輸出減を上回った。