国内

ワクチン輸出国だった日本が、「輸入ワクチン頼み」に落ちぶれた根本原因 (2/2ページ)

 ■画期的技術をもっていたUMNファーマは債務超過に

 現在、日本では主に5社が開発に取り組み、うち4社が臨床試験中だが、年内に供給できる見通しは立っていない。寒々とした状況だが、一回消えかけたワクチン開発が盛り上がる機運はあった。09年から10年にかけて蔓延した新型インフルエンザの世界的流行だ。日本でも推定で2000万人が感染、200人を超える死者を出した。

 この際、政府は約1000億円の補助金を出して国内3社に新型インフルエンザワクチンの製造工場を整備させた。しかし、インフルエンザの収束であえなく計画は立ち消えとなる。有事にしか使わないワクチンの製造設備を民間企業が維持するのは過大な負担となるからだ。

 さらに14年には、鶏卵で培養する従来方法ではなく、遺伝子組み換え技術を用いて開発した同ワクチンを厚労省所管の「医薬品医療機器総合機構」に新規メーカーのUMNファーマが承認申請した。鶏卵培養だとワクチン製造に約半年かかるところ、この方法なら1~2カ月に短縮できる画期的技術だ。

 当時、UMNファーマは最大8000万人分のワクチン生産能力を有する工場をもち、同社の季節性インフルエンザワクチンの原液はその後、仏サノフィの米子会社にも提供された。米国では承認されていたためだ。しかし、同機構は明確な理由を示さないまま、UMNファーマの申請を3年間放置し、同社は2017年に取り下げを余儀なくされた。その後、UMNファーマは債務超過になり、今は塩野義製薬の傘下に入っている。

 ■日本の「mRNAワクチン開発」は予算カットで18年に凍結済み

 2010年には政府の有識者会議もワクチン製造会社の支援や開発の推進などの提言をしていたが、結局、この提言が日の目を見ることはなかった。

 新型コロナワクチンの開発に道を開いたとされるmRNAワクチンでも国立研究開発法人である医薬基盤・健康・栄養研究所が開発を進めていたが、臨床試験の予算がカットされ、18年には計画が凍結された。

 米バイオのモデルナが13年に47億円、16年に135億円の支援を国防省や保健社会福祉省からそれぞれ受けていたのとは対照的だ。平時での備えがあったからこそ、新型コロナの世界的感染から1年余りで同社が新型ワクチンの開発ができたのだ。

 ■責任をすべて行政に押し付けるのは得策ではない

 米国や中国のワクチン開発は安全保障との絡みで語られることが多い。しかし、日本がいつまでもワクチンの輸入に頼るようなことにとどまれば、変異を繰り返すコロナの猛威が起きるたびに、新たなワクチンの供与を要請する事態が繰り返されることになる。財政支出で「買い占める」ことをすれば、諸外国から集中非難を受けることにもなりかねない。

 ワクチン開発には巨額な資金がかかる一方で、実際に感染が起こらなければワクチンが使われることもない。研究施設や製造設備の維持にかかる負担を企業だけに課すことは難しい。

 英国では製薬会社に毎年一定額を支払い、必要な時に必要な量を優先的に受け取れる「サブスクリプション(定額制)」方式の新薬の調達契約を導入している。同方式であれば、製薬会社も資金回収への懸念を抱えることなく設備を維持できる。

 新型コロナ以外の感染症は今後も続く可能性はある。副作用が起こるかもしれない新型ワクチンの認可に厚労省の役人が慎重になる心情は理解できる。責任をすべて行政に押し付けるのは得策ではない。これまでの失敗を生かし、ワクチンを含めた新たな薬や治療法の開発を進められる仕組みを作らなければ、日本の感染症対策はいつまでたっても世界に劣後することになる。

 (プレジデントオンライン編集部)(PRESIDENT Online)

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