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動き始めた自動販売機市場 必要条件だったモバイル決済の普及

 ベトナムで自動販売機を見ることはほとんどない。硬貨がない一方で紙幣は質が低く、安定した読み取りは無理である。停電の多さや大胆な窃盗の可能性も見過ごせない。しかし今、業界の夜は官主導で明けつつある。

 ハノイ市では観光地であるホアンキエム湖で、2016年9月に試験運用の1台目が設置された。露天商によって頻発するぼったくりから観光客を保護するのが目的らしい。4カ月間で飲料約21万4000本を販売し、売り上げは18億ドン(約846万円)。遅い時間帯にも購入可能で便利だという評価を得た。その後、防犯対策を施しやすい工業団地内や新興住宅区(ゲートシティー)に広がり、18年には160台となった。同年、ハノイ、ホーチミン、ダナンなど各市は「自動販売機増設普及促進」の方針を発令、台数目標も掲げた。

 ◆ハノイは市にも収入

 ハノイはこの方針で、「小売業態転換」「生活利便性向上」「近代化」を目的に、市の管理する公園、バス停、景勝地などの設置場所について入札を行うとした。人流の多い場所は小売業者にとって価値が高く、市も収入を得られる。上記の目的を建前とすればこの辺りが市の本音かもしれない。ハノイ市商工局のサイト「買い物マップ(http://bandomuasam.hanoi.gov.vn/)」には、スーパーマーケットやガソリンスタンドなどに加えて自販機設置場所も掲載され、市として周知に注力し、利用促進を図っていることがうかがえる。ハノイの20年の設置目標は1000台で、ホーチミンは4000台、ダナンは100台だった。

 民間では、スタートアップにさまざまな動きが見られる。シンガポールのベンチャーキャピタル(VC)「Sugar Ventures」の出資を受ける「Dropfoods」は、独自暗号通貨「Dropcoins」を使用して商品購入やユーザー間取引を行うアプリと自販機側の受信端末を開発、現金を使わないモデルで先行した。

 米国発の「Kootoro」は、17年にホーチミンで無人販売店「Toromart」を開店。小さな店舗内に設置された15台の自販機には食品だけでなく日用品まで並び、支払いはモバイルアプリである。防犯をどうしているのか確認するとガードマンがいるらしいが、「店員」としてはノーカウントというわけである。同社は今後8000台以上への拡大計画を掲げている。

 ◆モバイル決済で前進

 別のベトナム企業「International Consumer Product Investment」の自販機網「Select and Buy」は、13省市で展開されている。QRコード決済アプリ1位の「MoMo」で支払い可能で、病院、学校、工業団地などに設置されている。

 モバイル決済の普及は、自販機業界“誕生”の必要条件だったといえそうだ。一方、ハノイの入札では、天候不順による電力供給不安定化に備えた低消費電力・漏電対策機種の優先や、防犯カメラの搭載義務などが示された。これらの社会課題や国情、国民性を反映したベトナム固有の機能や事業モデル開発が必要になってくると思われる。将来性は大きいがどのようなモデルが優位に立つかはまだ分からず、スタートアップの領域といえる。自販機王国日本の企業がリスクを取る姿はまだ見られない。

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 B&Company株式会社:日系初のベトナム市場調査専門企業。同社サイトではベトナム国内での企業調査や消費者調査の結果を公表している。問い合わせ先:info@b-company.jp

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 「ASEAN経済通信」 https://www.asean-economy.com

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