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カリスマ広報が「炎上した商品」を翌年大ヒットさせた“攻めの戦略” (1/2ページ)

 2011年に社会問題となった「おせち事件」。その翌年、おせちのインターネット販売が実は大成功を収めていたことをご存じでしょうか? 元ぐるなび広報の栗田朋一さんは、「マイナスをプラスに変えるストーリーがあれば戦える」と言います--。

 ※本稿は、栗田朋一『新しい広報の教科書』(朝日新聞出版)の一部を再編集したものです。

 ■信頼が地に落ちるほどの出来事

 2011年のお正月、ネット通販の根幹を揺るがしかねない騒動が起きました。

 それは「スカスカおせち事件」と呼ばれ、大きな社会問題になりました。横浜市にある飲食店が、クーポン共同購入サイトを通して、おせち料理の宅配セットを販売しました。その中身が、広告の写真とはまったく違うひどいもので、多数の苦情が寄せられる事態になったのです。

 料理は箱の容積に比べて内容量が極端に少なく、写真では傷んでいるようなものまで見受けられました。この画像はネットで拡散され、「生ゴミ」「残飯」という非難を浴び、ついには消費者庁が事情聴取を行う事態にまで発展したのです。

 商品を画像で選ぶネット通販にとっては、「信頼」が命です。その信頼を地まで落とすほどの出来事ですから、同じインターネットの仕事に携わる者として、これほど腹立たしい事件はありませんでした。

 ■あえて事件に触れる広報戦略

 おせち料理は、「ぐるなび食市場」の中でも、年間を通じて一番売り上げの大きな商品です。その稼ぎ頭が、この不祥事により、次の年から大打撃を受ける可能性が出てきたのです。

 このとき大手の通販サイトでは、積極的なPRを自粛し、その事件には触れないよう努めていたようです。しかし、私はそういうときだからこそ、リスクを背負って積極的に打ち出していくべきであり、そのことが信頼回復につながるはずだと判断しました。

 このときのPRストーリーで、私はあえて「昨年はおせち問題が世間を騒がせました」という、マイナス要素から入ったのです。

 ■マイナスをプラスのストーリーに

 それまでおせち料理は百貨店に行ったり、お店で予約をして買うものだと、多くの人が思っていました。この事件を通して「ネットでおせちが買える」という認識が世の中に広まり、ぐるなび食市場のおせち販売は好調なスタートを切りました。

 こう切り出すと、ほとんどの記者が「え!? あんなことがあったのに例年より売れているの? それはなぜ?」と興味を持ってくれます。

 そして、今年ならではの現象や取り組みを紹介していくのです。まず2010年からやっていた「お試しおせち」に目をつけました。これは500円で買えるおせちで、お正月よりももっと前の、10月ごろにはお取り寄せができる商品です。おせち料理に入れる10品以上の料理が少しずつ、小さい箱の中に入っています。お客様はそれを食べて味を確認してから、「これならいいな」と思ったら、本番の3万円、5万円といったおせちを頼めるという試みです。このタイミングだからこそ、お試しおせちがみんなの不安を解消できるアイテムとして受け入れられると確信していました。

 また、食材の産地や内容量など、おせちメニューに関する詳細な情報を明記することにしました。これをおせちを提供する店舗側に、厳格に義務づけたのです。

 ■ユーザーの動向の変化もキャッチ

 さらにサイト内でのユーザーの動きを調べてみました。すると、ウェブ上で商品を選ぶ際、その年は多くのユーザーがページの隅々まで見ていたり、製造元の会社概要まで見に行ったりして念入りに確認し、ページの滞在時間も延びていることがわかりました。

 そして見ている時間は土曜日や日曜日の夜がほとんどです。

 これが何を意味しているのかというと、そのページを家族みんなで見ているということです。おせちは家族で食べるものですから、家族みんなで選んでいるのでしょう。百貨店などに家族総出でおせちを見に行くのは大変ですが、インターネット上だと気軽にみんなで見て、選ぶことができます。それがインターネットで買う際のメリットでもあるのです。

 さらに、インターネット上でアンケート調査を行い、おせちを食べたい理由や購入時に重視することや、お試しおせちへの関心度を聞き出したり、家族で選ぶという情報から、東日本大震災後の家族関係に関する設問も入れました。すると、6割以上の人が「親子関係を深めたい」と回答したので、この結果から、親子関係を深めるために、おせちをみんなで選びませんか、と呼びかけたのです。

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