海外情勢

航空、コロナで明暗浮き彫り カンタスは浮上もシンガポールは最悪の赤字

 新型コロナウイルス禍で、オーストラリアのカンタス航空とシンガポール航空の明暗が浮き彫りになっている。原則、足元のコロナ感染抑制に成功している豪州は国内市場の需要が上向いており、その恩恵でカンタス航空は力強く浮上している。これに対し、感染の新たな拡大でほぼどこへも就航できないシンガポール航空は、記録的な損失を計上するなど問題から抜け出せないままだ。

 1~6月期利益2倍

 無論、カンタス航空も安心するのはまだ早いが、5月20日には今年1~6月期の国内路線の収入が昨年下半期のほぼ2倍になるとの見通しを示した。同社と傘下の格安航空会社(LCC)ジェットスターは引き続き国際線再開には至っておらず、国内を空路で移動する人々に対応するため、昨年7月以降38路線を追加運航している。

 一方、比較的小さな島国のシンガポールでは豪州のような巨大な国内市場に頼るわけにはいかない。香港と隔離期間を相互に免除する「トラベルバブル」協定に合意はしたものの、国内の感染者数増加で計画は再び棚上げされ、シンガポール航空がわずかな収入を得る可能性すらなくなった。同社が5月19日に発表した2021年3月期通期連結決算は、最終損益が43億シンガポールドル(約3567億円)と過去最悪の赤字額となった。

 両社の明暗は広範な世界の航空業界と世間一般の状況を反映している。米国や中国の航空会社は、国外旅行を妨げる制限は今もあるが、立ち直りつつある。例えば中国国際航空(エア・チャイナ)は先日、4月の旅客輸送量が前年の約3.2倍だったことを発表した。多くの人に国境は閉鎖されているが、こうした国々では人々が外食やスポーツイベント、コンサートに出かけて正常感を取り戻そうとしており、飛行機に乗っている。

 1年前に新型コロナ感染症の影響で事実上の経営破綻に陥り、任意管理手続き(日本の民事再生法に相当)に入っていた豪ヴァージン・オーストラリア航空は5月20日、路線の増設や増便、スタッフを増員すると発表した。

 見通し達成は望み薄

 シンガポールでは、公共の場で集まる際の人数を2人に制限するなど新たなソーシャルディスタンス(社会的距離)の措置が講じられている。また、ビジネストラック(相互グリーンレーン)を7カ国・地域と導入したものの、中国本土とブルネイを除いて一時的に停止している。

 シンガポール航空は今後数カ月間で徐々に旅行需要が上向くと予測しているが、旅客輸送量が7月までにコロナ禍前の水準の約32%に達するとの見通しを達成する望みは薄い。

 同社は5月19日、「一部の国々では国内市場が回復してきたが、国際的な空の旅は引き続き厳しく制限されており、その回復軌道は今も不明だ」と発表資料で述べている。

 ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のアナリスト、ジェームス・テオ氏によると、カンタス航空は国内旅行の力強い回復を受け、月当たりのフリーキャッシュフロー(純現金収支)が約1億豪ドル(約84億7500万円)の黒字になっているという。テオ氏は同社の有利子負債が今年、既にピークに達し、6月までに昨年12月の60億5000万豪ドルを下回る可能性があると分析する。

 それでも同社は6月までの1年間の税引き前損失が20億豪ドルを超える見通しで、たとえ航空会社が危機を脱してもかなり深刻かつ長期にわたる傷を負ってやり繰りしていることは明らかだ。

 同社のジョイス最高経営責任者(CEO)は5月20日の発表で、「今回の回復ではまだ長い道のりをたどることになるが、徐々に峠を越えてきていると感じている。その主な推進力となっているのは国内旅行のリバウンドだ」と強調した。(ブルームバーグ Will Davies)

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus